経済産業政策の新機軸における賃金上昇の持続可能性について、過去30年の課題と今後の展望を解説したものです。
主要なポイント
1. 過去30年間の賃金停滞の背景
- 長期デフレにより新商品・サービスに価値に見合った価格をつけづらい風潮が定着
- 企業は国内では人件費抑制などコストカットに注力
- 成長や売上拡大のためグローバル事業拡大や海外企業への投資を優先
- 日本の賃金と民間設備投資は欧米と比較して著しく低い水準で推移
2. 足下の賃金上昇の実態
- 2024年春季労使交渉は33年ぶりの高水準を記録
- 2年連続で5%を上回る賃上げ率を達成
- 2025年春闘も前年を上回る水準で妥結
- 賃金上昇の機運が企業・労働者双方に広がる
3. 物価上昇と価格転嫁の課題
- 資源価格・原材料価格高騰により賃金以上に物価が上昇
- 値上げが当たり前となる社会機運の醸成は「良いものには値がつく」文化形成に貢献
- 企業には人件費増加分も含めた価格転嫁が期待される
- 商慣習の変化により適正な価格設定が可能に
4. 持続的賃上げの鍵となる要因
- 新商品・サービス・ビジネスにつながる積極的な投資が重要
- 1991-2021年の主要先進国データで国内投資増加と賃金上昇に強い相関関係
- 民間設備投資は約30年ぶりに過去最高水準を更新
- 技術やビジネスモデル等のイノベーションも同時に必要
5. 経済産業政策の新機軸の成果
- 2021年から「国内投資拡大、イノベーション加速、国民所得向上」の好循環を目指す
- 国内投資は日本全国で拡大傾向
- 2040年までの持続的成長シナリオを含む第4次中間整理を公表
- 国内投資と賃上げによる「潮目の変化」が持続的賃上げにつながる見込み
記事は、30年にわたる賃金停滞から脱却し、国内投資拡大とイノベーションを通じて持続的な賃金上昇を実現する道筋を示しています。