農林水産省が令和7年6月に公表した「施設園芸をめぐる情勢」について、日本の施設園芸の現状と次世代型施設園芸への転換に向けた取り組みを総合的に解説したものです。
本資料では、日本の施設園芸面積が約4万3千ヘクタール（ガラス温室1,700ha、ビニールハウス等41,300ha）であり、野菜・花き・果樹の高品質生産を支える重要な生産基盤となっていることを示しています。施設園芸による生産額は農業総産出額の約35％（約3兆円）を占め、単位面積当たりの生産性は露地栽培の約10倍に達することから、日本農業の集約的発展において中核的役割を果たしています。
エネルギー問題への対応が重要な課題として取り上げられており、施設園芸の経営費に占める光熱動力費の割合が平均25％（重油価格高騰時は35％超）に達していることから、省エネルギー対策と再生可能エネルギーの活用が急務となっています。ヒートポンプ、木質バイオマスボイラー、地中熱利用システムなどの導入により、化石燃料使用量を50％以上削減した事例が増加しています。
次世代施設園芸の展開として、環境制御技術とICTを融合させた「スマート温室」の普及が進んでおり、温度・湿度・CO2濃度・日射量などを統合的に制御することで、トマトでは10a当たり収量が50トン（従来の2.5倍）を超える事例も報告されています。また、労働生産性の向上を図るため、自動搬送ロボットや収穫ロボットの実用化も進展しています。
記事は、施設園芸が気候変動に対応した安定的な農業生産を実現し、高付加価値農業への転換と輸出競争力強化において重要な役割を果たすことを示しています。