農林水産省が令和7年6月に公表した「花きの現状について」は、日本の花き産業の現状と課題、今後の振興方策について総合的に分析したものです。
本資料では、日本の花き産出額が約3,600億円(令和6年)と、ピーク時(平成10年)の約6,200億円から4割以上減少している厳しい現状を示しています。この背景には、冠婚葬祭の簡素化、若年層の花離れ、輸入切り花の増加(市場占有率約30%)などの構造的要因があることを分析しています。一方で、コロナ禍を経て家庭用需要が堅調に推移し、「花のある暮らし」への関心が高まっている新たな動きも確認されています。
生産面では、切り花類の作付面積が過去20年で約40%減少し、生産者の高齢化(平均年齢65歳)と後継者不足が深刻化しています。しかし、施設園芸の高度化により、単位面積当たりの生産性は向上しており、環境制御技術を導入した先進的な経営では、従来の2倍以上の収量を実現している事例も報告されています。
新たな需要創出の取り組みとして、「花いっぱいプロジェクト」による公共空間の緑化推進、花育活動による若年層への普及啓発、日持ち性向上技術の開発による品質改善などが進められています。また、輸出については、令和6年の花き輸出額が過去最高の150億円を記録し、特に中国・香港向けの高品質な切り花や盆栽の輸出が好調であることが示されています。
記事は、花き産業が日本の農業において重要な位置を占めており、生活に潤いをもたらす文化的価値と経済的価値の両面から、持続的な発展を図る必要性を示しています。