農林水産省の「薬用作物のページ」は、国内における薬用作物生産拡大と競争力強化を通じて、漢方薬等の原料となる生薬の国産化を推進する政策について詳述したものです。
薬用作物は「生薬の原料となる作物」として定義され、漢方薬等の医薬品製造に使用される重要な農産物です。現在、国内需要の約80%を中国等からの輸入に依存している状況にあり、安定供給確保と品質向上の観点から国内生産拡大が急務となっています。
令和7年度予算では「茶・薬用作物等地域特産作物体制強化促進」事業として年間約8.5億円を計上し、産地化に向けた総合的な支援を実施します。具体的には薬用作物産地支援協議会による相談窓口の設置、専門技術アドバイザーの派遣、売買マッチング支援、品質評価体制の整備などを行っています。同協議会では全国47都道府県に相談窓口を設置し、生産者からの技術相談に対応しています。
栽培技術面では農研機構が「薬用作物の国内生産拡大に向けた技術の開発」を実施し、主要品目であるカンゾウ、トウキ、シャクヤク、センキュウ、オウギ等の栽培技術確立を進めています。特にカンゾウでは国内適性品種の開発により収量が従来比1.8倍に向上し、トウキでは機械化栽培技術の導入により労働時間を35%削減する成果を上げています。
情報提供では「これから始める！薬用作物の栽培ガイド」や機械除草マニュアルを作成し、全国農業改良普及支援協会と連携して技術普及を図っています。栽培ガイドは主要15品目について、土壌準備から収穫・乾燥まで の全工程を網羅した実用的な内容となっています。
令和7年度には「薬用作物の産地化に向けた地域説明会および相談会」を全国6ブロックで開催し、新規参入希望者や既存生産者への技術指導を強化します。また、薬用作物シンポジウムを年2回開催し、研究成果の共有と産地間の情報交換を促進しています。
現在の国内生産状況では、栽培面積が約2,450ヘクタール、生産量が約1,280トン（乾燥重量ベース）となっており、主産地は北海道（面積シェア32.1%）、新潟県（18.7%）、長野県（12.4%）が上位を占めています。品目別では根茎類（トウキ、センキュウ等）が生産量の58.3%、葉茎類（シソ、ドクダミ等）が23.2%、果実類（ゴシツ、サンシュユ等）が18.5%となっています。
経済効果では薬用作物の平均販売単価が10aあたり約28.5万円と一般作物の約2.8倍の収益性を示し、中山間地域等での所得向上に寄与しています。特にカンゾウでは10aあたりの所得が約32万円、トウキでは約26万円と高い収益が期待できます。
農林水産省農産局果樹・茶グループ地域作物第3班（代表電話：03-3502-8111）が政策窓口となり、生産者や関係機関からの相談に対応しています。産地支援協議会のウェブサイトでは最新の技術情報、市場動向、補助事業の公募情報等を随時更新し、産地形成を多面的に支援しています。
記事は、薬用作物が医薬品原料の安定供給確保、農業所得の向上、地域農業の活性化において重要な役割を果たす戦略的作物であり、技術開発と産地育成を通じて国産化を推進することが国家的課題であると位置づけています。