中東レビューの刊行概要
アジア経済研究所は2014年2月、「中東レビュー Volume 1」を刊行し、その中で「中東政治の変容とイスラーム主義の限界」と題する政治経済レポートを掲載した。本レポートは鈴木均、内藤正典、渡邊祥子、ダルウィッシュ・ホサム、石黒大岳、齋藤純、土屋一樹の各研究者による共同執筆である。
アラブの春後の政治的変容
エジプトの体制転換の意義: 2013年7月初めにエジプトで発生した国軍主導による体制転換とその後の政治的混迷は、2011年初頭から始まった中東地域の長期的な政治変動の性格を象徴している。これは従来この地域の主要な政治イデオロギーであった「イスラーム主義」の限界が露呈したことを意味する。
イスラーム主義の歴史的位置付け
政治的潮流の変遷: 1950年代に高揚したアラブナショナリズムが1970年代以降政治的求心力を失う中で、1980年代以来中東各国に浸透していた「イスラーム主義」的政治潮流は、ムスリム大衆の社会的支持を拡大しながら社会主義とは異なる「第三の道」を提示するものとして期待されていた。
旧体制崩壊後の展開: チュニジア、エジプト、リビア、イエメンなど各国で権威主義体制が崩壊した後、イスラーム主義諸勢力が政治的前面に登場したのは、彼らがムスリム大衆に訴える具体的なモデルを持っていたからである。
イスラーム主義勢力の組織的基盤
多様な政治集団の形成: イスラーム主義勢力は歴史的経緯によりムスリム同胞団やサラフィー主義者など複数の政治集団を形成し、それぞれがイスラーム教義に従った地道な奉仕活動を通じて社会的な組織力と動員力を培ってきた。
政治的限界の露呈: しかし、実際の政権運営においては、イスラーム主義が抱える本質的な政治的限界が明らかとなり、中東政治の新たな転換点を迎えることとなった。
本レポートは1.77MBのPDFファイルとして提供され、アラブの春以降の中東政治動向を詳細に分析している。