厚生労働省のがん診療提供体制のあり方に関する検討会が2025年7月25日に公表した「2040年を見据えたがん医療提供体制の均てん化・集約化に関するとりまとめ(案)」について、将来の人口減少と高齢化社会におけるがん医療体制の再構築方針を示したものです。
検討会では関係学会から提出された資料に基づき、がん種別・医療行為別の均てん化・集約化の具体案が提示され、概ね了承されました。将来のがん医療需要と供給のバランス維持を目指し、三大治療(手術療法、放射線療法、薬物療法)における患者数予測と専門医数の変化が詳細に分析されています。需要予測では2025年を基準値1.0とした場合、2040年には手術療法が0.89に減少する一方、放射線療法は1.38、薬物療法は1.24に増加すると予測されています。
この変化は高齢化の進展により手術適応患者の減少と、より侵襲性の低い治療法への需要増加を反映しています。均てん化については、がん医療の地域格差を解消し、全国どこでも標準的ながん医療を受けられる体制の構築を目指しています。一方、集約化では高度で専門性の高い医療については、一定規模以上の施設に集約することで医療の質向上と効率化を図る方針が示されています。
2040年の医療提供体制ビジョンとして、新たな地域医療構想との役割分担も明確化されており、直近6年間の医療提供体制計画である医療計画との連携も重視されています。がん種別の特性に応じた柔軟な体制構築と、医療従事者の適正配置により、持続可能ながん医療提供体制の実現を目指しています。
記事は、人口動態の変化に対応したがん医療体制の戦略的再構築により、2040年においても質の高いがん医療を全国で提供できる体制の確立が可能であると結論づけています。