ジェトロが紹介したニプロファーマベトナムで活躍するベトナム出身マネージャーについて、日系企業における現地人材の育成と登用の成功事例を報告したものです。
ニプロファーマは、医療機器・医薬品大手のニプロ株式会社のベトナム現地法人として、2011年に設立されました。同社では設立当初から現地人材の積極的な採用と育成に注力し、現在では管理職の約80％をベトナム人が占めるまでになっています。本レポートでは、品質管理部門のマネージャーとして活躍するグエン・ティ・ハー氏のキャリアパスを通じて、日系企業における現地人材活用の可能性を探っています。
ハー氏は、ハノイ薬科大学を卒業後、2013年に新卒でニプロファーマに入社しました。当初は品質検査の現場担当者としてスタートしましたが、日本での研修機会を複数回経験し、日本の品質管理システムや企業文化を深く理解していきました。特に印象的だったのは、「カイゼン」の考え方で、小さな改善の積み重ねが大きな成果につながることを実感したといいます。
2018年には最年少でチームリーダーに昇進し、2022年には部門マネージャーに就任しました。現在は50名以上の部下を統括し、国際的な品質基準（GMP）の維持・向上に責任を持っています。ハー氏の成功要因として、技術的な専門性に加え、日本とベトナムの架け橋となるコミュニケーション能力、継続的な学習意欲が挙げられています。
同社の人材育成システムも注目に値します。日本への長期研修（6か月～1年）、社内でのOJT、外部研修機関との連携など、体系的な教育プログラムが整備されています。また、現地採用者にも日本採用者と同等のキャリアパスが用意されており、能力次第で経営幹部への登用も可能です。
ハー氏は、「日系企業で働く魅力は、長期的なキャリア形成ができることと、高い倫理観を持って仕事ができること」と語っています。また、日本人駐在員との協働については、「お互いの文化を尊重し、オープンなコミュニケーションを心がけることが重要」とアドバイスしています。
記事は、日系企業がアジアで成功するためには、現地人材への投資と権限委譲が不可欠であり、それが結果的に企業の競争力強化につながることを示しています。