日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の動向と、成長のためのDXに求められる取り組みについて、日米独企業の比較調査結果を分析したものです。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、2025年2月から3月末にかけて「DX動向2025調査」を実施し、日本企業1,535社、米国企業509社、ドイツ企業537社のDX取組を調査しました。調査結果によると、日本企業のDX取組割合は約8割で、米国企業と同水準、ドイツ企業を上回る結果となりました。
しかし、DXの経営面の成果に対する認識では、日本企業はコスト削減等に関しては米独企業に比べ高い一方で、売上高増や利益増加等の割合が低く、企業の成長よりも経営の効率化をDXの成果として捉える傾向があることが明らかになりました。日本企業の成長につながるDX(成長のDX)の取組は7割を超えていますが、効率化のためのDX(効率化のDX)の取組に比べて成果が出ている割合が相対的に低いことも判明しました。
本稿では、日本企業の「効率化のためのDX」「成長のためのDX」に注目し、DX取組と成果創出の現状、企業によるDX推進体制や取組施策との相関、米独企業との比較等の分析を行いました。分析の結果、成長のDXで成果を上げる日本企業は、米独企業の体制や取組に近いこと、成長のDXで成果が出ていない企業との間に体制や経営スタイルに違いがあることが明らかになりました。
成長のDXで成果を上げる企業の特徴としては、全社的なデジタル戦略の策定、経営層の積極的な関与、外部連携の重視、全体最適を意識した取組等が挙げられます。これは、「内向き・部分最適」から「外向き・全体最適」への転換が求められていることを示しています。
記事は、日本企業が経済成長を実現するためには、DXによる効率化だけでなく、成長を意識した取り組みが必要であり、そのためには経営スタイルや組織体制の変革が重要であることを結論づけています。