【記者会見】高田審議委員(三重、2025年7月3日分)
2025年7月3日に三重県津市で開催された日本銀行の高田審議委員による金融経済懇談会後の記者会見録で、地域経済の現状、物価動向、金融政策運営に関する質疑応答を記録したものです。
主要なポイント
三重県経済の現状と課題
- 三重県の人口は全国を上回るペースで減少しており、地域経済の重要な課題として認識されている
- 製造業は出荷ベースで全国9位を維持し、特に輸送用機械や電子部品・デバイスなどが成長を牽引している
- 百貨店・スーパー・ドラッグストアの販売量は足元で増加を続け、自動車販売も生産停止の影響が剥落して持ち直している
- 中小企業では価格転嫁と賃上げの難しさが指摘され、防衛的な賃上げにとどまっているとの声が多い
金融政策運営の方向性
- 現在は利上げの「いったんの休止局面」であり、一定の様子見期間の後、再びギアシフトを行える状況と認識
- 物価安定の目標への到達は「目の前に迫っている」状況だが、完全に達成されたわけではない
- 2月の段階では「近づいている」との表現だったが、3月の賃上げ動向を踏まえ、一歩前進したとの評価
- 年内の利上げの可能性については予断を持って語るべきではないとし、状況に応じて対応する方針
米国経済・関税政策の影響
- 相互関税賦課の影響について「計画運休」に例え、事前に見通しを引き下げて対応している状況と説明
- 関税の影響だけでなく、減税や規制緩和といった需要を支える政策も総合的に判断する必要性を指摘
- 7月は関税交渉や財政政策など多くの変化が予想され、今後の動向を注視する必要がある
- 不透明感・不確実性が強い状況が続いており、「相互関税台風」が過ぎ去ったとは判断できない
国債買入れと市場への配慮
- 各ゾーンの国債市場動向や需給状況を判断しながら柔軟に対応する方針
- 予見可能性と柔軟性のバランスを重視し、市場の安定に配慮した運営を行う
- 10~25年ゾーンの買入れ比率が50%となっているが、硬直的でなく柔軟に対応する考え
- 市場で価格形成されることが基本だが、安定性への配慮も必要との認識
記事は、高田審議委員が三重県経済の構造的課題を踏まえつつ、国内外の不確実性が高い中で慎重な金融政策運営を続ける必要性を示し、物価目標の達成に向けて前進しているものの、当面は緩和的な金融環境を維持しながら状況を見極める方針であることを明確にしたものです。