企業における採用経路の選択動向とその背景要因について分析した調査研究報告書です。
本調査は、ハローワークの利用割合が低下傾向(1991年16%→2022年18.2%)にある一方、民間職業紹介事業所の利用が上昇傾向(2000年0.9%→2022年5.9%)にある中で、企業がどのように採用経路を選択し使い分けているかを明らかにすることを目的として実施されました。調査は検討会を4回開催し、企業10,000社を対象としたアンケート調査と民間求人サイト運営会社へのヒアリングを通じて実施されています。
企業の採用経路利用状況について、調査では「ハローワーク」「自社ホームページ」「求人広告会社」「人材紹介会社」「縁故・リファラル」「その他民間サービス」の6つの経路を分析しました。最も利用率が高いのはハローワークで全体の約70%の企業が利用しており、次いで自社ホームページ(約60%)、求人広告会社(約50%)となっています。企業規模別では、大企業ほど複数の採用経路を併用する傾向が強く、1,000人以上の企業では平均4.2経路を利用している一方、299人以下の企業では平均2.5経路にとどまります。
採用経路の選択戦略については、募集する人材タイプによって明確な使い分けが確認されました。管理職・専門職といった中核人材の採用では人材紹介会社の利用率が45%と高く、若年層の採用では求人広告会社(55%)や自社ホームページ(62%)が主流となっています。一方、パート・アルバイトの採用ではハローワーク(78%)と求人広告会社(65%)が中心で、スポットワークでは「その他民間サービス」(マッチングアプリ等)の利用が急増し35%に達しています。
採用経路のパフォーマンス評価では、採用成功度(質・量の両面での満足度)において人材紹介会社が最も高い評価を得ており、特に専門職採用では成功率が72%に達します。コスト効率の観点では、ハローワークと縁故・リファラルが優れており、採用単価は他の経路の3分の1程度となっています。採用スピードでは求人広告会社と「その他民間サービス」が優位で、募集開始から採用決定まで平均1.5ヶ月と、他の経路の半分程度の期間で採用を実現しています。
業種別の特徴として、IT・情報通信業では自社ホームページ(85%)と「その他民間サービス」(52%)の利用が突出して高く、製造業では人材紹介会社(38%)の利用が他業種より高い傾向があります。医療・福祉業ではハローワーク(82%)への依存度が高い一方、小売・サービス業では求人広告会社(68%)が主要な採用経路となっています。地域別では、都市部ほど民間サービスの利用率が高く、地方ではハローワークへの依存度が高まる傾向が確認されました。
民間求人サイト運営会社へのヒアリングからは、近年の傾向として「ダイレクトリクルーティング型」サービスの急成長、AIマッチング技術の導入による採用効率化、業界・職種特化型サービスの増加などが明らかになりました。また、求職者の行動変化として、スマートフォンでの求職活動が主流となり、動画コンテンツや社員インタビューなどリッチコンテンツへのニーズが高まっていることが指摘されています。
記事は、企業の採用経路選択は募集する人材タイプ、企業規模、業種、地域などの要因によって戦略的に行われており、各経路の特性を理解した上で、採用目的に応じた最適な組み合わせを選択することが採用成功の鍵となることを実証的に示しています。