人材の確保・定着に成功した企業の採用活動における具体的な取組事例を紹介したものです。
本事例集は、深刻な人材不足に直面する企業に対し、中途採用・経験者採用を通じた人材確保と定着の成功事例を提供することを目的として作成されました。過去3年間で中途採用活動を実施した企業は88.5%にのぼり、採用した正社員の平均50%が中途採用者という状況の中、求職者への情報開示とオンボーディング(入社後の支援)に焦点を当てて14社の事例を収録しています。
掲載企業の規模は正社員数26人から3,001人以上まで幅広く、業種も製造業、医療・福祉、情報通信業、サービス業など多岐にわたります。小規模企業では、Q.ENESTでんき株式会社(26人)が社長自らSNSで情報発信を行い、企業理念や働き方を積極的に開示することで応募者を増やしています。医療法人木南舎冨田病院(79人)では、職場見学や体験入職を通じて実際の業務や職場環境を事前に体感してもらうことで、ミスマッチを防いでいます。
中規模企業の取組として、株式会社KMユナイテッド(270人)は建設業界のイメージ払拭のため、YouTubeで社員インタビューや職場の雰囲気を発信し、若手人材の獲得に成功しています。株式会社ちよだ鮨(338人)では、転職者向けの研修プログラムを充実させ、メンター制度により新入社員の不安解消と早期戦力化を実現しています。医療法人江頭会さくら病院(348人)は、オンライン面接の導入により地方からの人材獲得を可能にし、入職後は専門研修と定期面談で定着率を向上させています。
大企業の事例では、今治造船株式会社(1,762人)が地元高校・大学との連携による人材パイプライン構築と、社内技能伝承制度により技術者の確保・育成に成功しています。日本新薬株式会社(1,865人)は、キャリア採用者向けの専用オンボーディングプログラムを開発し、入社3ヶ月・6ヶ月・1年の節目でフォローアップを実施することで、早期離職率を大幅に改善しました。三井化学株式会社(3,001人)では、職種別・レベル別の詳細な職務記述書を公開し、求める人材像を明確化することで、応募者とのマッチング精度を高めています。
これらの事例に共通する成功要因として、採用前の情報開示では業務内容、労働条件、キャリアパス、企業文化などを具体的かつ正直に伝えること、採用後の支援では導入研修、メンター制度、定期面談、職場交流イベントなど複数の施策を組み合わせることが挙げられます。特に中途採用者が入社当初に感じる「仕事の進め方の違い」「職場文化への適応」「人間関係構築」といった課題に対し、体系的な支援体制を整備している企業ほど高い定着率を実現しています。
記事は、人材確保・定着の成功には、企業規模や業種に関わらず、採用前の積極的な情報開示と採用後の手厚いフォロー体制の構築が重要であることを、具体的な企業事例を通じて実証的に示しています。