中途採用・経験者採用が活躍する企業における情報公表や取組に関する調査研究結果をまとめたものです。
本調査は、人生100年時代における職業生活の長期化を背景に、中途採用・経験者採用者が企業内で活躍できる環境整備の推進を目的として実施されました。調査は検討会を6回開催し、企業・労働者へのアンケート調査およびヒアリング調査を通じて、採用後の定着や活躍に関する実態を把握しました。企業アンケートでは10,000社を対象に1,029社から回答を得て、労働者アンケートでは635名から回答を収集しています。
企業の中途採用活動の実態について、過去3年間で中途採用活動を実施した企業は88.5%に達し、採用した正社員全体に占める中途採用者の比率は平均50%となっています。採用ポートフォリオの分析では、企業規模が大きくなるほど若年層の採用比率が高まり、1,000人以上の大企業では若年層が42.1%を占める一方、50人未満の小規模企業では39歳以下の若年層は27.8%にとどまります。業種別では、医療・福祉業で若年層比率が48.0%と最も高く、運輸・郵便業では23.3%と最も低い結果となりました。
情報開示が採用パフォーマンスに与える影響については、積極的に情報開示を行う企業ほど採用満足度が高いことが明らかになりました。特に「将来の業務内容やキャリアパス」「将来的な賃金」といった将来に関する情報を開示している企業では、採用人数の目標達成率が75%を超え、開示していない企業の60%程度を大きく上回っています。労働者側から見ても、転職前に「労働環境」「入社直後の賃金」「配属部署や業務内容」について正確な情報を得られた場合、転職満足度が約80%に達することが判明しました。
オンボーディング(入社後の支援施策)の効果については、導入研修、メンター制度、上司・人事との面談、職場同僚とのコミュニケーション促進など、複数の施策を組み合わせて実施する企業ほど、中途採用者の定着率が向上することが確認されました。労働者調査では、入社当初に「これまでの勤め先との仕事の進め方の違い」(46.1%)、「仕事の内容」(33.9%)、「会社や職場の文化・風土」(28.9%)などに困難を感じており、これらの課題に対応するオンボーディング施策の重要性が示されています。
記事は、中途採用・経験者採用の成功には、採用前の積極的な情報開示と採用後の体系的なオンボーディングの両輪が不可欠であり、これらの取組が企業の人材確保・定着および労働者の転職満足度向上に寄与することを実証的に示しています。