金融庁が2025年6月17日に公表した「FSA Analytical Notes(2025.6)vol.2」の英語版は、地域銀行の信用リスク管理実務の分析と信用保証制度の利用実態に関する2つの分析を収録したものです。
主要なポイント
地域銀行の信用リスク管理実務の分析
- 共通データプラットフォームを通じて収集した貸出データを用いて、信用リスク削減(融資カバレッジ)と格付遷移予測モデルの検証を実施
- 複数の銀行から借入を行っている共有債務者(shared borrowers)において、担保カバー率が低い傾向が判明
- 県境を越えた融資(prefecture-wise cross-border loans)でも同様にカバー率が低い傾向を確認
- 「要注意先以上」から「要管理先以下」への格下げを予測するモデルは、財務情報のみを使用しても比較的高い精度で機能することが示唆された
信用保証制度の利用状況に関する実態把握
- 共通データプラットフォームの貸出データを活用し、機械学習アプローチで信用保証利用の決定要因を分析
- 売上高と自己資本比率が信用保証利用に与える影響が相対的に大きく、これらの指標が高い債務者ほど信用保証を利用しない傾向
- 債務超過の有無により信用保証の利用傾向に大きな差があることが判明
- 業種間でも信用保証の利用傾向に差異があることを確認
- 本分析は信用保証利用の適切性を評価するものではなく、利用実態の把握を目的としたもの
データ活用の高度化に向けた取り組み
- 金融監督・政策立案におけるデータ活用の強化は中長期的な課題として位置づけ
- 金融庁は今後もデータ分析能力とデータインフラの構築を継続的に推進
- 高粒度データ(granular data)を活用した分析により、金融システム全体の強靭性と脆弱性の的確な把握を目指す
記事は、金融庁がデータ駆動型の金融行政を推進し、個別金融機関の経営状況や金融システム全体のリスクをより精緻に把握するための取り組みを強化していることを示しています。