この記事は、金融庁が2025年7月4日に公表した「2025年 保険モニタリングレポート」で、2024事務年度の保険会社に対するモニタリング結果と保険業界の現状分析、今後の対応策について取りまとめたものです。
主要なポイント
保険市場の概況
- 生命保険会社41社、損害保険会社57社(在日支店含む)、少額短期保険業者123社が事業を展開(2025年6月時点)
- 生命保険では大手生命保険グループが国内市場の過半を占有
- 損害保険では大手損害保険グループが国内市場の8割強を占有
- 2024年度の主要生命保険会社は内外株式の増配による利息・配当金収入増加で増益
- 2024年度の主要損害保険3グループは政策株式の売却益増加等により増益
生命保険会社のビジネス動向
- 少子高齢化や金融業界のDX進展を踏まえ、非保険領域へのビジネス展開が加速
- 日本生命がライク(保育事業)やOA総研(介護事業)を買収(2024年11月、2025年1月)
- 第一生命HDがAnd Do HD(不動産事業)を買収(2024年12月)
- 予定利率の引上げの動きが広がり、「金利ある世界」への対応が進展
- 過去の高予定利率契約の減少により「逆ざや」は減少傾向
損害保険会社の収益構造
- 火災保険は自然災害の頻発・激甚化により近年2,000億円超の保険引受損失が発生していたが、2023年度は大幅減少
- 自動車保険等のその他保険では利益が発生
- 2023年度の全体としての利益率(保険引受利益÷正味収入保険料)は+2.3%
- 自動車保険市場の縮小への対応が継続的な課題
保険業界の信頼回復への取組み
- 保険金不正請求事案や保険料調整行為事案への抜本的な改善対応を実施
- 業務改善計画のフォローアップを継続
- 情報漏えい事案を踏まえた損害保険会社への業務改善命令を発出
- 保険募集管理態勢等に問題が認められた保険代理店に業務改善命令を発出
- 保険業法の改正等、制度・監督上の対応を実施
重点モニタリング項目
- 営業職員管理態勢の高度化、保険代理店における募集管理態勢の高度化
- 外貨建保険の募集管理等の高度化、乗合代理店向け保険商品の販売手数料等の監視
- 財務の健全性確保、グループガバナンスの高度化
- マネー・ローンダリング・テロ資金供与・拡散金融対策の強化
- サイバーセキュリティ対策、経済安全保障上の対応
- 気候変動への対応、顧客視点に立った商品開発
記事は、金融庁が保険業界の持続可能なビジネスモデル構築と顧客本位の業務運営の徹底を促すため、PDCAサイクルを意識した保険行政を推進し、保険会社等との深度ある対話・モニタリングを継続していることを示しています。