農林水産省が令和7年3月に公表した「グリーンな栽培体系パンフレット」について、環境負荷を低減しながら生産性を維持・向上させる新たな農業生産方式の普及促進を目的とした総合的な指針を提示したものです。
本パンフレットでは、「みどりの食料システム戦略」に基づき、2050年までに化学農薬使用量50％削減、化学肥料使用量30％削減、有機農業取組面積25％（100万ha）拡大という野心的な目標を達成するための具体的な栽培技術体系を紹介しています。特に、IPM（総合的病害虫管理）技術、スマート農業技術、有機農業技術を組み合わせた「グリーンな栽培体系」の構築が重要であることを強調しています。
先進的な取り組み事例として、水稲栽培における密苗移植と可変施肥技術の組み合わせによる化学肥料30％削減、施設園芸における天敵昆虫と物理的防除の活用による化学農薬70％削減、露地野菜における緑肥作物の導入と土壌診断に基づく施肥設計による環境負荷低減など、全国各地の成功事例が詳しく紹介されています。
経済性の観点からも分析が行われており、初期投資は必要なものの、資材費の削減や付加価値向上により、3～5年で投資回収が可能な事例が多いことが示されています。また、環境保全型農業直接支払交付金やみどり投資促進税制など、各種支援制度の活用により、生産者の取り組みを後押しする仕組みも整備されています。
記事は、グリーンな栽培体系への転換が、環境保全と農業経営の両立を可能にし、消費者の環境意識の高まりに対応した持続可能な食料システムの構築に不可欠であることを示しています。