農林水産省が令和7年4月に作成した「バイオ炭の農地施用をめぐる事情」について、農業分野における気候変動対策としてのバイオ炭の可能性と実用化に向けた取り組みを詳細に解説したものです。
本資料では、バイオ炭（biochar）が農作物残渣や木質バイオマスを酸素制限下で炭化させた物質であり、土壌に施用することで炭素を長期間固定できる温室効果ガス削減技術として注目されていることを説明しています。日本では2019年にバイオ炭の農地施用がJ-クレジット制度の対象となり、2023年度末時点で約50のプロジェクトが登録され、年間約3万トンのCO2削減効果が認証されています。
バイオ炭の農業生産への効果についても詳しく分析されており、土壌の保水性・透水性の改善、pHの調整、養分保持能力の向上など、多面的な土壌改良効果が確認されています。特に、酸性土壌の中和効果や、窒素・リンなどの養分流亡の抑制効果により、化学肥料の使用量を10～30％削減できる事例も報告されています。また、土壌微生物の活性化により、連作障害の軽減や病害抑制効果も期待されています。
実用化に向けた課題としては、バイオ炭の製造コストが1トン当たり3～10万円と高額であること、品質のばらつきが大きいこと、施用効果の地域差や作物による違いが明確でないことなどが挙げられています。これらの課題に対し、地域の未利用バイオマス資源の活用や、製造技術の標準化、施用マニュアルの整備などの取り組みが進められています。
記事は、バイオ炭の農地施用が気候変動対策と農業生産性向上の両立を可能にする有望な技術であり、地域資源の循環利用と農業の持続可能性向上に貢献する可能性を示しています。