本記事は、財務総合政策研究所(財務総研)のPRI Open Campus第45回として、西田安紗研究員が早稲田大学政治経済学術院の別所俊一郎教授と共同で実施した医療保険の自己負担に関する研究を紹介したものである。研究テーマは「医療保険の自己負担の動学的効果:年齢DIDアプローチ」で、2014年4月から実施された70~74歳高齢者の自己負担割合引き上げの影響を分析している。日本では1961年の国民皆保険制度導入により、ほぼ全国民が公的医療保険に加入しており、患者の窓口負担が低く抑えられているため、コスト抑制のインセンティブが生じにくい構造となっている。医療技術の進歩と高齢化により医療費が年々増加し、制度の財政持続可能性が危ぶまれている中で、「どの世代にどれだけの負担を求めるべきか」が重要な政策課題となっている。自己負担割合の引き上げが医療費に与える影響を正確に分析するには、年齢や健康状態などの影響を除外し、自己負担割合「のみ」が異なる条件での比較が必要である。そこで着目したのが2014年の制度変更で、2014年3月以前は70歳以上の自己負担割合が原則1割だったが、2014年4月以降に70歳に達した者(1944年4月以降生まれ)については70~74歳の自己負担割合が2割に引き上げられた。一方、不利益変更回避のため、2014年4月時点で既に70~74歳だった者(1944年3月以前生まれ)は1割負担に据え置かれた。この制度変更により、生年月日がわずか1か月違うだけで自己負担割合が異なるという自然実験的な状況が生まれ、年齢DIDアプローチによる因果関係の識別が可能となった。75歳以降は生年月日に関係なく1割負担が継続されるため、長期的な影響も追跡可能である。本研究は、こうした制度変更を活用して医療保険制度改革の政策効果を実証的に分析する重要な試みであり、今後の社会保障制度設計に貴重な知見を提供するものとなっている。
PRI Open Campus~財務総研の研究・交流活動紹介~45 医療保険の自己負担の動学的効果:年齢DIDアプローチ
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