経済産業省が実施した「無人自動運転等の先進MaaS実装加速化のための総合的な調査検討・調整プロジェクト」の成果報告書について報告したものです。
本プロジェクトは、我が国における自動運転技術と先進モビリティサービス(MaaS:Mobility as a Service)の社会実装を加速化することを目的として、令和5年度に実施されました。世界的な脱炭素の潮流と、少子高齢化や都市部への人口集中などの社会構造の変化に対応するため、自動運転技術は移動の自由の確保、地域活性化、交通事故削減、移動の効率化、人材不足解消などの社会課題解決への貢献が期待されています。
プロジェクトの実施体制は、産業技術総合研究所を中心に、野村総合研究所、日本工営、三菱総合研究所、テクノバ、豊田通商の6機関による共同体制で構成されました。経済産業省・国土交通省の自動走行ビジネス検討会(現:モビリティDX検討会)で示された方向性に基づき、自動運転の次期プロジェクトとして設定された4つのテーマ(限定空間レベル4の実現、対象エリアや車両の拡大と事業性の向上、高性能トラックの実用化、インフラ協調型の自動運転)を中心に、総合的な調査検討を実施しました。
主要な実施内容として、第一に「RoAD to the L4」関連プロジェクト全体の推進と連携体制の構築があります。これには、研究開発・社会実装計画の具体化、タスクフォースやワーキンググループの開催、国内外の関連動向調査、標準化活動への貢献などが含まれます。特に永平寺町でのレベル4自動運転移動サービスの実証では、実際の運行における不具合の改善や、駐輪自転車との接触事故事例の分析など、実運用における課題抽出と対策検討を行いました。
第二に、自動運転・MaaS等に関する人材育成の取り組みです。特に重要性・緊急性の高い人材として「セキュリティ&セーフティ統合人材」と「社会アーキテクト人材」を特定し、そのスキル標準の具体化と育成施策の拡充を図りました。また、第四次産業革命スキル習得講座の拡充など、人材の発掘と裾野拡大につながる仕組みの確立にも取り組みました。
第三に、社会受容性の向上に向けた調査研究です。無人自動運転移動サービスの地域における社会受容性のあり方検討、Webサイトでの情報発信の充実、サポカー・ADAS技術の情報収集・分析・発信などを実施しました。また、レベル4自動運転に関係する法令の整理も行い、社会実装に向けた制度面での課題を明確化しました。
第四に、先進モビリティサービスの実証支援として、スマートモビリティチャレンジの推進があります。先進MaaS実証の企画・立案・公募補助、採択プロジェクトの進捗管理、スマートモビリティチャレンジ推進協議会の運営などを通じて、全国各地での実証事業を支援しました。物流分野では、トラックデータ情報連携基盤の確立と、結節点も含めた物流の効率化に向けた検討を進めました。
記事は、自動運転技術の社会実装には、技術開発だけでなく、人材育成、社会受容性向上、制度整備、データ連携基盤の構築など、総合的なアプローチが不可欠であることを結論づけています。