資産評価システム研究センターが2025年7月に発行した資産評価情報第267号について、人口減少社会における適正課税等に向けた取り組みと不動産管理の課題を分析したものです。
仙台市財政局税務監の佐藤純一氏による報告では、仙台市が市制施行後136年、政令指定都市移行後36年を経て、東日本大震災をはじめとする試練を乗り越え杜の都を創り上げてきた経緯を紹介しています。せんだい都心再構築プロジェクトや次世代放射光施設ナノテラスの本格運用、東北大学の国際卓越研究大学認定を契機とした最先端リサーチコンプレックス形成支援により地域経済活性化を図っており、固定資産税・都市計画税収入は継続的な地価上昇や新増築の影響で増収基調が続き、市税収入全体の4割以上を占める重要な自主財源となっています。一方で、ベテラン職員の退職による担当職員のスキル低下、家屋評価棟数増加による事務負担増大が課題となっており、大規模家屋評価・償却資産課税・現所有者調査の専門部署創設、408条調査でのRPA活用、地番図のオープンデータ化などの業務効率化を推進しています。
横浜市立大学国際教養学部の齊藤広子教授による論考では、不動産のストック時代における管理適正化について分析されています。2025年5月23日に成立したマンション4法（区分所有法、被災区分所有法、マンション管理適正化法、マンション再生法）と住宅金融支援機構法の改正が不動産の新時代を示唆しており、現在約700万戸のマンションストックが築年数の経過、タワーマンション増加による高さの多様化といった変化に直面していることが示されています。
その他の内容として、総務省自治税務局による国有資産等所在市町村交付金制度の概要、令和9年度固定資産評価替えに関する留意事項、能登半島地震による液状化被害を受けた土地の評価、新潟市における所要の補正適用、山形県尾花沢市の固定資産税の取組み、EBPM（根拠に基づく政策立案）に基づく税負担軽減措置の効果検証などが詳述されています。
記事は、人口減少社会における固定資産税制度の適正運用と不動産管理の適正化が、限られた職員数での行政サービス質維持と持続可能な財政基盤確保において重要であることを示しています。