国際貿易と軍事衝突の関係性について、国家体制の違いに着目して再検証した研究です。
主要なポイント
1. 研究の背景と動機
- 2022年ロシアのウクライナ侵攻、2023年ハマス・イスラエル紛争など世界の軍事衝突が継続
- 第二次世界大戦後も国家間軍事衝突は減少していない現実
- 世界の輸入額は特に2000年代以降急速に増加している一方で紛争は継続
- ロシアにとってウクライナは16番目の重要な貿易相手国であったにもかかわらず侵攻が発生
2. 研究の新たな視点
- 国家体制の違い(民主主義国家、権威主義国家、ハイブリッド国家)を分析に組み込む
- 民主主義国家では企業や国民が投票行動等で政府に影響を与えられる
- 権威主義国家では為政者が国民への負の影響を顧みず軍事行動に出る可能性
- 18世紀モンテスキューの『法の精神』以来の貿易と平和の関係を再検証
3. 分析手法とデータ
- 1976年~2014年の国家間軍事衝突データを使用
- 二国間貿易データと国家体制データを組み合わせた計量推定分析
- Correlates of Warデータベース、UN Comtradeなど信頼性の高いデータソースを活用
4. 研究の主要な発見
- 二国間貿易額の増加は紛争確率の低下に関係している
- この関係は民主主義国家同士のペアで特に顕著に現れる
- 権威主義国家同士では貿易と紛争抑止の関係が認められない
- 国家体制の組み合わせが貿易の紛争抑止効果に決定的な影響を与える
記事は、国際貿易が紛争を抑止する効果は国家体制に大きく依存し、民主主義国家間では有効だが権威主義国家間では限定的であると結論づけています。