ジェトロが2025年7月31日に公表したカナダのゼロエミッション車(ZEV)市場に関する地域分析レポートです。
カナダでは2024年のZEV新車登録台数が前年比43.6%増の27万985台に達し、全新車登録(185万9,549台)に占める割合が14.6%となりました。ZEVはバッテリー式電気自動車(BEV)、プラグイン・ハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)の3種類として定義されており、統計上はBEVとPHEVの合計が対象となっています。BEVは前年比40.7%増の20万2,103台、PHEVは52.8%増の6万8,882台を記録しています。
州別ではケベック州のZEV比率が30.9%と最も高く、ブリティッシュコロンビア州20.9%、オンタリオ州8.1%が続いています。カナダ政府は2050年までの温室効果ガス実質ゼロ目標の下、2035年までに乗用車とピックアップトラックの新車販売を100%ZEVにする義務付けを発表しており、2026年モデルから20%、2035年には100%の段階的導入を計画しています。
購入支援制度として、連邦政府の「iZEVプログラム」で最大5,000カナダドル(約54万円)の補助金を支給していましたが、需要の高まりにより2025年1月に一時停止となりました。メーカー別では、テスラが補助金支給台数で4万3,158台(20%)と最多ですが、前年から9.7ポイントのシェア縮小となり、市場の分散化が進んでいます。
生産面では、GMカナダのCAMI工場で商用ZEV「ブライト・ドロップ・ゼボ」を2万711台生産し、前年の5,775台から大幅増加しました。一方、ステランティス、フォード、ホンダは生産計画の延期や見直しを実施しており、市場需要の動向に応じた調整が行われています。
記事は、カナダのZEV市場が政府の強力な政策支援の下で急成長を続けているものの、補助金制度の縮小と生産体制の調整期にあり、2035年の完全ZEV化目標に向けた産業構造の転換が進行中であることを示しています。