経営者保証改革プログラムの進展と金融機関の取り組みについて、2025年5月29日に開催されたRIETI政策シンポジウムの議事概要をまとめたものです。
主要なポイント
1. 経営者保証改革の現状と成果
- 2024年度上期の新規融資件数に占める「経営者保証に依存しない融資」の割合が50%超を達成
- 「経営者保証に依存しない融資」と「有保証融資のうち適切な説明を行い記録した融資」の合計がほぼ100%に到達
- 2022年12月に策定された「経営者保証改革プログラム」により監督指針を改正
- 金融機関による経営者保証に過度に依存しない融資慣行が着実に浸透
2. 先進的金融機関の取り組み事例
- 北國銀行:「原則、経営者保証は徴求しない」方針を10年前から実施、直近で92%が無保証融資
- 西武信用金庫:預貸率70%を維持、取引中小企業の70%近くが黒字を計上
- 事業性評価に積極的に取り組む支店長ほど経営者保証に依存しない傾向
- デジタル・AIの実装により事業理解のコスト削減と生産性向上を実現
3. 経営者保証改革のメリット
- 事業者側:新しいチャレンジが可能、大規模設備投資のリスク軽減、円滑な事業承継、経営者の精神的安定
- 金融機関側:顧客との信頼関係深化、新規融資機会の拡大、財務体質改善への共同取り組み
- 地域経済:企業の成長促進、地域全体のリターン向上
- 事業再構築補助金への申請増加(西武信用金庫では1,000件)
4. 今後の課題と方向性
- 経営者側の課題:適切な会計処理の不足、経営者保証解除への意識・決意の不足
- 金融機関側の課題:解除後の企業フォロー体制の構築、現場職員の腹落ち感の醸成
- 経営者保証ガイドラインの認知度向上が急務
- 経営者、金融機関、認定支援機関の三者連携の必要性
5. 規律付けの代替手段
- コベナンツ(企業・金融機関間の約束)による規律付けの可能性
- 継続的なモニタリングと対話による関係性構築
- 平時・早期からの経営改善・事業再生支援の重要性
- 中小企業活性化協議会によるトレーニー研修制度などの支援制度活用
記事は、経営者保証に依存しない融資慣行の確立は、単に保証を外すことが目的ではなく、金融機関と事業者が共に成長し、地域経済の活性化につながる重要な改革であると結論づけています。