研究背景と対象地域
「資源のフロンティア」形成: グローバル資本主義の拡張により世界中の辺境地に「資源のフロンティア」が形成され、ケニア北西部トゥルカナ地域では2010年頃から多国籍企業が原油探査を開始。現地住民は急激で予測困難な経済的・社会的変化を経験している。
トゥルカナ社会の特性: 植民地期から現在まで政治的・経済的・社会的に周縁化されてきた歴史を持つ牧畜社会。しかし石油開発により従来の社会構造が大きく変動している。
多国籍企業の初期戦略と住民対応
エリート優遇戦略: 多国籍企業は当初、操業承諾を得るために現地政治家などエリート層を優遇する戦略を採用。一般住民はエリートのみが不当な便益を得ていると感じ、強い不満を蓄積した。
住民による実力行使: エリート偏重に対し一般住民は道路封鎖などの「実力行使」によって企業操業を妨害し、利益配分を要求。組織的な抵抗活動を展開した。
若者による下請け事業参入戦略
起業・交渉活動: 現地の若者たちは自らの会社を創設し、多様な交渉を通じて多国籍企業からの下請け仕事を獲得。従来の牧畜中心社会から新たな経済活動への転換を図った。
「参入を求める闘い」の概念: 本研究では住民による「実力行使」と下請け事業獲得を石油開発への「参入を求める闘い」と定義。トゥルカナ社会の若者たちが未経験で不慣れな石油開発状況にいかに対処したかを分析。
研究の学術的意義
フロンティア研究への貢献: 辺境社会の住民が資源開発という未知の状況に能動的に対処し、経済的利益を獲得していく過程を詳細に記述。アフリカ研究、開発人類学、資源開発研究に重要な知見を提供。
キーワード: 多国籍企業、現地住民による操業妨害、下請け仕事、交渉、牧畜社会の現代的変容が分析の中心テーマとなっている。