農林水産省が発行する農林水産政策研究成果情報誌の第85号について、農林水産業の持続的発展と農山漁村振興に向けた最新の政策研究成果を体系的に整理した研究情報資料です。
技術革新による農業生産性の向上
本号では、スマート農業技術の導入効果について詳細な実証分析結果を掲載しています。ドローンを活用した水稲の生育診断技術により、収量が平均8.3%向上し、施肥効率が15%改善された事例が報告されています。また、AI画像解析による病害虫の早期発見システムでは、農薬使用量を23%削減しながら品質維持を実現した成果が示されています。
IoT センサーを用いた土壌・気象データの自動収集システムでは、データ駆動型の栽培管理により、トマトの10a当たり収量が従来比12%向上し、同時に水使用量を18%削減する効果が確認されています。これらの技術革新により、2030年までに農業生産性を現状から25%向上させる目標達成への道筋が明確化されています。
6次産業化と輸出促進の戦略展開
6次産業化の推進については、農産物の付加価値向上事例として、地域特産品のブランド化による収益性改善効果が分析されています。具体的には、地域農協が主導する加工・販売一体型事業において、原材料価格の1.8倍での販売を実現し、農家所得が平均32%向上した事例が紹介されています。
農林水産物・食品の輸出促進では、2024年の輸出額が1兆3,500億円に達し、政府目標の2兆円達成に向けた進捗状況が報告されています。特に日本産米の輸出では、アジア諸国での日本食ブームにより輸出量が前年比45%増加し、付加価値の高い特別栽培米の海外展開が成功している実態が明らかにされています。
担い手育成と農山漁村の持続可能な発展
農業従事者の高齢化と後継者不足問題に対しては、新規就農促進策の効果検証結果が掲載されています。2024年度の新規就農者数は5万2,000人となり、そのうち49歳以下の就農者が全体の68%を占めるなど、若い世代の農業参入が順調に進んでいることが報告されています。
また、農業法人化の推進により、経営の効率化と規模拡大が進んでおり、法人経営体の平均経営面積が個人経営の2.3倍となっています。これにより、労働時間の短縮と所得水準の向上を両立させる経営モデルが確立されつつあります。
環境保全型農業の推進では、有機農業の作付面積が2019年比で1.4倍に拡大し、生物多様性保全と持続可能な農業生産システムの構築が着実に進展していることが確認されています。
記事は、技術革新と制度改革の相乗効果により、日本農業の競争力強化と農山漁村の活性化が着実に進んでおり、持続可能な食料システムの構築に向けた基盤整備が順調に進捗していると結論づけています。