米国商務省経済分析局(BEA)が2025年6月30日に公開した米国独自の付加価値貿易統計の最新データを基に、トランプ関税が米国輸出に与える影響を分析したものです。
米国独自の付加価値貿易統計の特徴
複雑化したグローバルサプライチェーンの中で、北米で生産される自動車は完成車として輸出されるまで平均8回国境を越えるなど、モノの流れが複雑になっています。従来の貿易統計では製品の価格が全て原産国に計上されるため、複数国で付加価値が創出される現実を捉えきれない問題がありました。
BEAが2021年12月に公開を開始したBEA TiVAは、より迅速かつ詳細で米国の公式統計と整合性の取れた独自の付加価値貿易統計として、2025年6月にはユーザーがデータベースをカスタマイズしてダウンロードできる機能が追加されました。
米国輸出の付加価値構造
2023年時点で、米国の財・サービス輸出額に占める米国内付加価値は2兆3,637億ドル(89.5%)、米国外付加価値は2,759億ドル(10.5%)となりました。米国内付加価値は2007年の1兆2,910億ドル(85.7%)から2倍近くに拡大し、比率も上昇しています。
米国外付加価値を国・地域別にみると、欧州が653億ドル(23.7%)で最大、次いでカナダ539億ドル(19.5%)、日本・中国を除くアジア太平洋477億ドル(17.3%)、メキシコ304億ドル(11.0%)、中国246億ドル(8.9%)、日本130億ドル(4.7%)の順となっています。
中国・日本からの付加価値減少傾向
中国からの付加価値は2018年の13.1%をピークに減少傾向が続き、2023年は8.9%まで低下しました。これは2018年に開始されたトランプ政権の対中追加関税措置と時期が一致しており、米中対立の影響でサプライチェーンがASEANなど他地域にシフトしていることを示している可能性があります。
日本からの付加価値も2007年の6.8%から2023年には4.7%まで減少し、絶対値でも唯一2007年を下回りました。ただし、日本の対米直接投資残高は2024年末で8,192億ドルと6年連続で国別首位を維持しており、在米日系企業による雇用創出(52万9,200人)や米国からの財輸出(823億ドル)では首位となっています。
記事は、トランプ関税のような輸入制限措置が米国輸出の約10%に影響を与える可能性があり、特に欧州への措置が最も大きな影響を持つと分析しています。