農畜産業振興機構が報告した韓国の野菜需給調整政策について、高温乾燥による不作のはくさいの備蓄放出と、豊作のたまねぎの出荷抑制措置を解説したものです。
韓国では、2025年の異常気象により野菜の生産に大きな影響が出ており、品目によって正反対の需給状況が発生しています。はくさいについては、夏場の記録的な高温と降雨不足により、主産地での生産量が前年比30％以上減少しました。特に、韓国の食文化に欠かせないキムチの主原料であるはくさいの不足は、消費者物価にも大きな影響を与える懸念がありました。
韓国政府は、価格安定と供給確保のため、政府備蓄のはくさいを市場に放出する措置を実施しました。備蓄量は約1万トンで、主要都市の卸売市場を通じて段階的に供給されています。また、中国からの輸入枠を一時的に拡大し、関税を引き下げることで輸入促進を図っています。これらの措置により、はくさいの卸売価格は一時期の高騰から徐々に安定化の兆しを見せています。
一方、たまねぎは春先の好天により豊作となり、収穫量が平年を20％以上上回る見込みとなりました。供給過剰による価格暴落を防ぐため、政府は生産者団体と協力して出荷抑制措置を実施しています。具体的には、一定規格以下のたまねぎの市場出荷を制限し、加工用や飼料用への転用を促進しています。また、産地での一時保管に対する支援金の支給や、学校給食等への供給拡大などの需要喚起策も併せて実施されています。
韓国の野菜需給調整システムは、備蓄制度、輸入調整、出荷調整、需要喚起策などを組み合わせた包括的なものとなっています。今回の事例は、気候変動による生産の不安定化が進む中で、柔軟な需給調整メカニズムの重要性を示しています。
記事は、野菜の安定供給と価格安定化における政府の役割と、生産者保護と消費者利益のバランスを取る政策運営の難しさを浮き彫りにしています。