日本銀行調査統計局が運営する「実質輸出入の動向」データベースについて、2025年8月20日付でメイン系列データが更新されたことを発表したものです。
実質輸出入統計の意義と目的
実質輸出入統計は、価格変動の影響を除いた実質的な価値ベースでの輸出入動向を把握することで、実質GDPと整合的な経済分析を可能にする重要な統計です。日本の対外経済活動を正確に評価するためには、名目値では見えない実質的な取引量の変化を捉えることが不可欠であり、この統計がその基盤的データを提供しています。
統計の構成と分析視点
本統計は、（1）実質輸出入のデータ（メイン系列）と（2）地域別・財別の実質輸出についての試算結果（参考系列）の2つから構成されています。特に参考系列では、地域別・財別の詳細な実質輸出動向を分析することにより、わが国の実質輸出の動向を多面的に分析することが可能となっています。これにより、特定地域や特定商品分野における輸出競争力の変化や、世界経済の構造変化が日本の輸出に与える影響を精緻に把握できます。
公表スケジュールと運用体制
データの公表は厳格なスケジュールに基づいて実施されており、メイン系列については財務省「貿易統計（速報）」の公表日当日14:00、参考系列については同3営業日後の14:00を原則としています。この迅速な公表体制により、政策当局や市場関係者、研究者等が最新の実質輸出入動向を踏まえた分析・判断を行うことが可能となっています。
データの信頼性と改定体制
統計の精度確保のため、作成に使用する統計の改定、基準変更、年間補正等により事後的な改定が定期的に実施されています。また、経済情勢の分析上の必要に応じて作成方法の変更も行われる可能性があり、利用者にはこれらの改定が分析結果に与える影響について十分な注意が求められています。直近では2025年7月23日に一部見直しと遡及改定が実施されており、統計の継続的な精度向上が図られています。
作成方法論と理論的基盤
実質輸出入の具体的な作成方法については、日本銀行調査統計局が公表している詳細な解説資料および萬・柴﨑・長田・東による調査論文「実質輸出入の見直しと活用のポイント」（2017年4月）において理論的背景と実際の計算手順が明示されています。これらの資料は、統計利用者が適切にデータを解釈し、分析に活用するための重要な参考資料となっています。
最新データの特徴と動向
2025年8月20日に公表されたメイン系列データでは、最新の輸出入統計を基にした実質ベースでの動向が示されており、円安進行や世界経済情勢変化等の影響を価格要因から分離した実質的な貿易取引の変化を把握することができます。また、7月23日公表の図表およびデータ（参考系列）では、地域別・財別の詳細な分析結果も提供されています。
利用上の注意事項と活用方針
日本銀行では、本統計が調査分析の一部として金融経済に関心を有する幅広い利用者への情報提供を目的としており、商用利用時には事前相談、引用・転載時には出所明記を求めています。照会先として調査統計局経済調査課景気動向グループが設定されており、統計の適切な理解と活用を支援する体制が整備されています。
記事は、日本銀行の実質輸出入統計が、価格変動の影響を除いた実質ベースでの対外経済活動の把握により、日本経済の構造変化と国際競争力の動向を精緻に分析するための不可欠な統計インフラとして機能していることを示しています。