経済産業省資源エネルギー庁が開催した電力システム改革の検証を踏まえた制度設計ワーキンググループ(第3回)の開催資料について、電源投資の現状と課題、同時市場の導入に向けた検討状況を中心に議論した内容を紹介したものです。
本ワーキンググループは2025年7月22日に開催され、電力システム改革の進展を踏まえた新たな制度設計について検討が行われました。会議では、電力の安定供給と市場の効率性向上を両立させるための2つの重要テーマが議論されています。
電源投資を取り巻く現状と課題
資源エネルギー庁の分析によると、電力自由化以降、電源投資が停滞している現状が報告されました。特に、火力発電所の新設が大幅に減少し、既存設備の老朽化が進行している実態が明らかになっています。再生可能エネルギーの導入は拡大しているものの、調整力として必要な火力発電の維持・更新が課題となっており、長期的な供給力確保のための制度的対応が急務とされています。容量市場の運用改善や、長期脱炭素電源オークション等の新たな投資促進策の必要性が提示されました。
同時市場の導入に向けた検討状況
同時市場(エネルギー・調整力・容量等を同時に取引する市場)の導入について、詳細な制度設計の検討状況が報告されました。現在の電力取引は、スポット市場、需給調整市場、容量市場等が個別に運営されていますが、これらを統合的に最適化することで、より効率的な電力システムの実現を目指しています。欧州等の先行事例を参考にしながら、日本の電力系統の特性に適した制度設計が検討されており、2020年代後半の導入を目標に準備が進められています。
今後の課題と方向性
ワーキンググループでは、電力システム改革の成果を踏まえつつ、新たに生じた課題への対応が議論されました。特に、再生可能エネルギーの大量導入に伴う系統安定性の確保、電源投資の予見可能性向上、市場の透明性・公正性の確保等が重要な論点として挙げられています。また、消費者保護の観点から、河野オブザーバーより電気料金の適正性確保に関する意見も提出されています。
記事は、電力システム改革が新たな段階に入り、市場メカニズムの更なる活用と安定供給の両立に向けた制度設計の重要性を示しています。