経済産業省資源エネルギー庁が開催した制度検討作業部会(第106回)において書面審議された容量市場に関する検討内容について、制度の現状と今後の方向性を示したものです。
本会議は2025年7月22日に書面審議形式で開催され、容量市場の運用改善と制度の高度化について検討が行われました。容量市場は、電力の安定供給に必要な供給力(発電能力)を確保するため、将来の供給力に対して対価を支払う仕組みであり、2020年度から本格運用が開始されています。
容量市場の現状と課題
資料では、これまでの容量市場の約定結果と運用実績が分析されています。初回オークション(2020年度実施、2024年度実需給)では約定価格が14,137円/kWと高騰しましたが、その後の制度改善により、直近のオークションでは安定的な価格形成が実現しています。一方で、再生可能エネルギーの大量導入に伴う調整力不足や、老朽火力発電所の計画的な退出促進など、新たな課題も顕在化しています。
制度改善の方向性
検討資料では、容量市場の更なる改善に向けた具体的な方策が提示されています。需要曲線の設定方法の見直し、発動指令電源(デマンドレスポンス等)の参加要件緩和、蓄電池等の新技術への対応などが検討されています。また、カーボンニュートラル実現に向けて、非効率石炭火力の段階的フェードアウトを促進しつつ、必要な供給力を確保するための制度設計も議論されています。
他市場との連携強化
容量市場と需給調整市場、電力スポット市場等との連携強化についても検討されています。各市場の役割を明確化し、相互補完的な機能を発揮することで、電力システム全体の効率性向上を目指しています。特に、蓄電池やデマンドレスポンス等の分散型リソースが複数市場で価値を提供できる仕組みの構築が重要な課題として位置付けられています。
今後の展望
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、容量市場は電力の安定供給と脱炭素化の両立を支える重要な制度として位置付けられています。再生可能エネルギーの更なる導入拡大を前提としつつ、必要な調整力・慣性力を確保し、電力システムの安定性を維持するための制度設計が継続的に検討されることとなっています。
記事は、容量市場が日本の電力システムの安定供給を支える基幹的な制度として機能しており、エネルギー転換期における新たな課題に対応するための進化を続けていることを示しています。