ベトナムの労働組合と労使紛争解決について、2025年7月に施行された改正法を踏まえて解説したものです。
主要なポイント
1. 労働者代表組織の二層構造
- ベトナム労働総同盟(VGCL)に属する伝統的労働組合
- VGCLに属さない「企業における労働者組織」の設立が認められた
- 両者を包含する「基礎レベル労働者代表組織」という新概念を導入
- 企業における労働者組織の設立には管轄国家機関の登録が必要だが、実施細則は未制定
2. 2025年7月施行の改正労働組合法
- 企業における労働者組織がVGCL傘下に入る手続を新設(第6条)
- 使用者による基本給2%の組合費負担制度は維持(第29条第1項第b号)
- 12か月以上の労働契約を締結する外国人の基礎レベル労働組合加入を認可(第5条)
- 企業における労働者組織への労働組合資金分配規定を整備(第31条第4項)
3. 個別紛争解決システム
- 労働調停人による調停(原則前置、5営業日以内)
- 懲戒解雇・普通解雇等は調停前置の例外
- 労働仲裁評議会(両当事者合意により利用可、30日以内に決定)
- 裁判所への訴訟提起
- 基礎レベル労働者代表組織は労働者の委任により訴訟提起可能
4. 団体紛争とストライキ
- 権利に関する紛争と利益に関する紛争に区分
- 団体交渉:最多構成員数を有する組織が交渉権を保有、90日以内の交渉期間
- 適法なストライキには調停・仲裁、意見聴取(50%以上の同意)、5営業日前の通知等が必要
- 実態として多くのストライキは法定手続を経ずに実施
5. 企業実務への影響
- 懲戒手続:基礎レベル労働者代表組織の代表者参加が必要
- 就業規則:10人以上の企業は当局登録、基礎レベル労働者代表組織の意見聴取が必要
- 組合費:企業内労働組合の有無に関わらず基本給2%の負担義務
- 整理解雇:基礎レベル労働者代表組織との意見交換が必要
記事は、改正法が企業における労働者組織をVGCLシステムに取り込む方向性を示しており、労使関係の安定化には日頃の対話と関係構築が重要であると結論づけています。