農林水産省が令和7年6月に更新した「有機農業をめぐる事情」は、日本と世界の有機農業の現状、市場動向、政策支援、課題と今後の展望について包括的にまとめたものです。
主要なポイント
有機農業の定義と現状
- 日本の有機農業推進法では「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本」と定義
- 令和5年度の日本の有機農業取組面積は約3.0万ha(耕地面積の0.7%)
- 世界の有機農業取組面積は2022年で約96.4百万ha(全耕地面積の約2%)
- 日本の有機JAS認証取得農地は令和5年度で約1.5万ha
有機食品市場の規模と動向
- 世界の有機食品売上は2023年で約1,364億ユーロ(約20.7兆円)
- 日本の有機食品市場規模は2022年で約2,240億円(2009年の1,300億円から増加)
- 週に1回以上有機食品を利用する消費者は32.6%(2022年、2017年の17.5%から増加)
- 1人あたりの有機食品消費額の世界平均は2,346円、日本は1,794円
みどりの食料システム戦略における目標
- 2050年までに耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を25%(100万ha)に拡大
- 2030年までに有機農業の取組面積を6.3万ha、有機農業者数を3.6万人に拡大
- 2040年までに主要な品目について農業者の多くが取り組める次世代有機農業技術を確立
- 有機食品の国産シェアを2017年の60%から2030年に84%へ向上
政策支援と取組事例
- オーガニックビレッジの取組市町村が100市町村を超える(令和6年度)
- 有機農業産地づくり推進、グリーンな栽培体系への転換サポート等の支援事業を実施
- 環境保全型農業直接支払交付金により有機農業の取組を支援(10aあたり12,000円等)
- 学校給食における有機農産物の活用が拡大(令和5年度調査で活用市町村が増加)
生産者の課題と対応
- 有機農業に取り組む生産者の主な課題は、労力がかかる、病害虫の防除が困難、収量が少ない
- 技術開発として、スマート技術等による次世代有機農業技術の開発を推進
- 都道府県における有機農業指導員の育成(令和6年度で47都道府県に配置)
- 地域に応じた有機栽培マニュアルの作成と横展開を支援
記事は、有機農業が環境保全と持続可能な農業の実現に重要な役割を果たし、政策支援により着実に拡大していることを示しています。