調査開始の経緯 経済産業省及び財務省は、2025年6月2日に三菱ケミカル株式会社及び三井化学株式会社から財務大臣に提出された大韓民国産並びに台湾、澎湖諸島、金門及び馬祖から成る独立の関税地域産ビスフェノールAに対する不当廉売関税の課税申請について、関係法令に基づき検討を行った結果、調査の必要性を認め、両省合同による調査を開始することを決定した。ビスフェノールAは一般に白色の固体(顆粒状又は粉末状)であり、主としてポリカーボネート樹脂又はエポキシ樹脂等の原料として使用される重要な化学品である。
申請企業と対象国・地域 申請を行ったのは日本の主要化学メーカーである三菱ケミカル株式会社及び三井化学株式会社で、これらの企業は国内のビスフェノールA製造における主要プレーヤーである。調査対象は大韓民国産と台湾、澎湖諸島、金門及び馬祖から成る独立の関税地域産のビスフェノールAで、これらの地域からの輸入品が日本市場に与える影響が焦点となっている。
調査の実施方法と期間 調査は原則として1年以内に終了することとされており、今後、利害関係者からの証拠の提出等の機会を設けるとともに、大韓民国並びに台湾、澎湖諸島、金門及び馬祖から成る独立の関税地域の企業や日本国内の企業に対する実態調査による客観的な証拠の収集を行う。これらの結果を踏まえ、WTO協定及び関係国内法令に基づき、不当廉売された貨物の輸入及び当該輸入の日本の産業に与える実質的な損害等の事実の有無について認定を行う。
政策判断への影響と意義 この調査結果は、不当廉売関税の課税要否に関する政府判断の重要な根拠となる。ビスフェノールAは自動車部品、電子機器、建材など幅広い分野で使用されるエンジニアリングプラスチックの原料として不可欠であり、国内化学工業の競争力確保と公正な貿易環境の維持という観点から重要な案件である。調査に係る質問状等の詳細は、貿易経済安全保障局貿易管理部特殊関税等調査室のホームページで公開されており、関係者への透明性確保が図られている。