国土交通省国土政策局が実施した国土政策に関する専門的研究について、人口減少社会における国土利用の最適化と地域政策の方向性を分析した研究報告書です。
人口減少下での国土利用の現状分析
本報告書では、2025年時点で日本の総人口が1億2,400万人となり、2050年には1億600万人まで減少する見通しを踏まえた国土利用戦略を詳細に分析しています。特に注目すべきは、人口減少率に地域差が顕著に現れており、東京都心部では2050年まで人口増加が続く一方、地方部では最大40%の人口減少が予測される地域も存在することです。
この人口動態の変化により、全国の居住地域のうち約15%が2040年までに無居住化する可能性があり、これに伴う土地利用の再編が急務となっています。農地については、耕作放棄地の拡大が深刻で、2023年時点で約42万ヘクタールに達しており、食料安全保障の観点からも対策が求められています。
地域間格差の是正と持続可能な地域づくり
地域間の経済格差についても詳細な分析が行われており、東京圏の一人当たり県民所得が約420万円である一方、地方部では最低280万円と1.5倍の格差が存在しています。この格差是正に向けて、地方創生拠点都市の機能強化により、人口20万人規模の中核都市を中心とした広域連携体制の構築が提案されています。
また、デジタル技術を活用したテレワークの普及により、2024年時点で約28%の企業がテレワークを常態化させており、これにより地方移住を促進する効果が期待されています。具体的には、IT関連職種の地方移住が2019年比で2.3倍に増加するなど、働き方改革が地域分散に寄与している実態が明らかにされています。
災害に強い国土づくりと国土強靱化戦略
気候変動の影響により、年間降水量が過去30年平均と比較して12%増加し、時間雨量80mm以上の豪雨発生頻度が1.7倍に増加している現状を踏まえ、防災・減災対策の強化が重点課題とされています。
国土強靱化基本計画に基づき、2021-2025年度の5年間で総額15兆円の予算を投入し、河川整備、砂防事業、海岸保全施設の整備を推進しています。特に、流域治水の概念に基づく総合的な水害対策により、治水安全度を30年間で1.5倍に向上させる目標が設定されています。
記事は、人口減少と気候変動という二つの構造的変化に対応するため、国土利用の効率化と災害対応力の強化を両立させる統合的な政策アプローチが不可欠であると結論づけています。