経済安全保障の観点から、地方企業における技術流出対策の重要性と、経済産業省が地方経済産業局を通じて実施する支援体制について解説した記事です。
近年、技術流出は多様化・巧妙化しており、AIや半導体、素材などの先端分野では民間企業が主導するケースが多く、組織の大小や所在地にかかわらず、生産拠点の海外移転、海外資本の受け入れ、技術者の引き抜きなどの日常的な経済活動の中に技術流出リスクが潜んでいます。厳しい国際競争にさらされている民間企業が海外展開を図る中で、過度に萎縮することなく適切な対策を講じることが重要です。
2024年12月に施行された外為法に基づく新制度では、安全保障上管理を強化すべき重要技術（積層セラミックコンデンサ、炭素繊維、固体電解質など15種類）の移転を計画する事業者に事前報告義務を課し、経産省が助言を行う官民対話スキームが創設されました。原則として対話を通じた信頼関係のもとで課題解決を目指す仕組みです。
また、外為法による対内直接投資審査制度も重要な管理策となっています。日本企業が外為法で規定する一定の業種を営む場合、外国投資家は投資前に届出提出が必要で、国はリスク評価の上、投資の変更・中止を勧告・命令できる制度です。
経産省は2025年度から、「技術管理」「輸出管理」「投資管理」の3分野強化をテーマに、複数の地方経産局でパイロットプロジェクトを実施しています。例えば近畿経済産業局は、けいはんな学研都市の企業関係者らを対象に京都府警と共催で経済安全保障セミナーを開催し、技術流出対策の重要性や制度について説明します。
企業には「技術流出対策ガイダンス」（チェックリスト付き）や「民間ベストプラクティス集」の活用、「技術情報管理認証制度」（ものづくり補助金等の加点対象）の利用が推奨されています。優れた技術を持つ企業は地方にも多く存在するため、官民一体での技術流出対策の推進が重要となっています。