経済産業省が令和7年7月に改訂した「スピンオフ」の活用に関する手引き(参考事例編)について、実際のスピンオフ事例を通じて実施上の効果と留意点を解説したものです。
スピンオフの意義として、経営の独立、資本の独立、上場の独立による企業価値向上が期待されることが示されています。経営の独立により、各事業の経営者が中核事業に専念し、迅速で柔軟な意思決定が可能となります。資本の独立では、独自の資金調達により大規模M&Aなどの成長投資が実施可能となり、元親会社の競合相手との取引も可能になります。上場の独立により、コングロマリット・ディスカウントを克服し、各事業特性に応じた最適資本構成が実現できます。
国内事例として、コシダカホールディングスが2020年3月にフィットネス事業子会社カーブスホールディングスをスピンオフした事例が紹介されています。祖業のカラオケ事業とは成長戦略の方向性が異なることから実施され、新型コロナウイルス感染症の一時的影響はあったものの、両社株価の合計はスピンオフ前と比べて倍増する成果を上げました。
記事は、事業切り出し手法として事業譲渡、子会社上場と比較した際のスピンオフの特徴を整理し、親会社に売却益は入らないものの、株主には子会社の将来的な成長メリットを還元でき、一気にグループから切り離して上場させることが可能な手法として、その戦略的価値を評価しています。