防衛研究所の浅見真規研究員による、北朝鮮の新たな核ドクトリン(核武力政策)について分析したセミナー資料です。2022年に採択された新核ドクトリンの特徴と、それが示す北朝鮮の核戦略の変化を解説しています。
主要なポイント
1. 新核ドクトリン採択の背景
- 2022年に「朝鮮民主主義人民共和国核武力政策について」を採択
- 約10年ぶりの核ドクトリン改訂
- 従来より具体的で攻勢的な内容に変更
- 紛争の主導権を握ることを意図した新たな核戦略
2. 核の役割の拡大と変化
- 抑止のための核から、実際に使用する核へのシフト
- 限定的な核使用から全面戦争への発展を防ぐという考え方
- 「エスカレーション・ドミナンス」(段階的優位)の獲得を目指す
- 南北間の紛争において、相手に核使用を想定させることで優位に立つ戦略
3. 核使用条件の明確化
- 自国に対する攻撃が迫っていると判断される場合
- 明確な「報復」を示すことで抑止効果を高める
- 攻撃の予兆を捉えた段階での先制使用の可能性
- 核を先に使用しないとしていた2016年の第1回核実験時とは対照的
4. 指揮統制システムの課題
- 金正恩が何らかの形で指揮統制をとることが困難になった場合の対応
- 核攻撃が自動的に行われるシステムの構築を示唆
- 前線部隊への権限委譲の可能性
- 指揮系統が機能するかどうかに疑問が残る
5. 核ドクトリンの採択がもたらす影響
- 北朝鮮の自負が攻勢的な地位を確立したという認識
- 実質的な「核保有国」としての地位確立を狙う
- 朝鮮半島における南北関係と米朝関係の悪化
- 地域の安全保障環境の変化への対応
6. 防研セミナーブリーフィング開催情報
- 開催日時:7月26日(金)午後3時~4時
- 場所:市ヶ谷F1棟6階「国際会議場」
- 参加対象:防衛省職員(隊員限定)
- 問い合わせ:防研企画調整課 03-3268-3111(内線29177)
記事は、北朝鮮が核武力政策の改訂を通じて、より攻撃的で実戦的な核戦略へと転換し、朝鮮半島での紛争において主導権を握ろうとしている実態を明らかにしています。