総務省が設置した「広域大規模災害を想定した放送サービスの維持・確保方策の充実・強化検討チーム」（主査：三友仁志 早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授）が、2025年7月25日に公表した取りまとめ案について、その概要と提言内容を解説したものです。
本検討チームは、2025年2月から計5回の会合を開催し、①広域大規模災害を想定した放送を維持するための方策、②ローカル局の放送が停波した場合の代替手段の確保、③被災者の視聴環境の確保等について検討を行いました。能登半島地震での経験を踏まえ、災害時における放送サービスの継続性確保に向けた具体的な方策を提言しています。
主要な提言として、まず官民連携の充実が挙げられています。能登半島地震では、石川県災害対策本部へNHK、民間放送事業者、日本ケーブルテレビ連盟からリエゾン（連絡員）が派遣され、停電した中継局への燃料補給要請や避難所情報の入手等で成果を上げました。2025年6月末時点で39道府県でリエゾン派遣の取り決めがなされており、各地域での検討促進が求められています。また、定期的な訓練実施による緊急対応力の向上、放送種別や放送エリアを超えた連携体制の構築も重要とされています。
事業継続計画の実効性確保と放送ネットワークの強靭化も重要な課題です。放送事業者は、経営環境に配慮しつつ、広域大規模災害に対応できるバランスの取れた災害対策の実施、南海トラフ地震の被害想定見直しを踏まえたBCPの検証とPDCAサイクルの適切な実施が求められています。総務省は、放送ネットワークの強靭化支援、被災時の早期復旧のための財政支援の継続・拡充、災害時の許認可手続の簡素化に取り組むべきとされています。
停波時の代替手段として、東経110度CS放送におけるニュース専門チャンネルのスクランブル解除による放送実施、衛星放送やインターネット番組配信を含む情報伝達手段の重層化、臨時災害放送局の活用促進が提言されています。特に臨時災害放送局については、無線従事者資格要件の緩和や周波数選定の検討、開設・運営支援スタッフの確保に向けた協力体制構築が必要とされています。
記事は、被災者の視聴環境確保として、避難所等でのテレビ・ラジオ等の情報入手手段の確保、国・自治体・放送事業者等の関係者による連携体制の構築、平時からの備えの重要性を強調し、広域大規模災害時においても放送サービスを維持・確保するための包括的な対策の必要性を示しています。