日本政策投資銀行が発行する「新潟ハンドブック2025年度版」は、新潟県の経済・産業・社会情勢を詳細に分析した地域経済報告書です。
新潟県の総人口は約218.5万人（2024年10月現在）で、全国第15位の規模を有しています。県内総生産（GRP）は約8.7兆円で、一人当たりGRPは約398万円となっています。地域構成では下越地域が県内人口の58.3%、中越地域が28.4%、上越地域が10.8%、佐渡地域が2.5%を占めており、新潟市を中心とした一極集中の構造が見られます。
製造業では化学工業が製造業出荷額の23.1%（約1.8兆円）を占め、金属製品製造業が15.6%、食料品製造業が12.9%と続いています。特に新潟東港工業地帯では昭和電工の化学プラント、信越化学工業の塩化ビニル樹脂工場が立地し、年間出荷額は合計約4,200億円を記録しています。一般機械器具製造業では建設機械メーカーのコベルコ建機が年間約1,800台を生産しています。
農業分野では水稲作付面積が全国1位の約11.7万ヘクタールを誇り、米の収穫量は約63.8万トン（全国1位）に達しています。コシヒカリの作付面積は県内水稲全体の68.2%を占め、新之助、つきあかりなどの新品種も含めた新潟県産米のブランド価値は年間約2,850億円と推計されています。また、日本酒製造業では県内90社の酒造メーカーが年間約2.1万キロリットルを製造し、全国シェアの15.3%を占めています。
エネルギー分野では東京電力柏崎刈羽原子力発電所（7基、出力821.2万kW）の再稼働準備が進んでおり、運転再開による地域経済への波及効果は年間約180億円と試算されています。天然ガスでは阿賀沖油ガス田から年間約7.4億立方メートルを産出し、全国天然ガス生産量の26.8%を占めています。再生可能エネルギーでは風力発電の導入容量が約18.5万kW（全国第6位）、太陽光発電が約74.2万kW となっています。
港湾物流では新潟港の年間取扱貨物量が約1,247万トンで、うちコンテナ取扱量は約27.8万TEUを記録しています。対中国貿易では年間約1,850億円、対韓国貿易で約420億円の貿易額があり、日本海側諸港との連携により北東アジア経済圏の玄関口として機能しています。
観光分野では年間観光入込客数が約5,380万人で、うち県外客が約1,420万人、外国人観光客が約28.5万人（2019年比81.2%まで回復）となっています。佐渡金山の世界遺産登録に向けた推薦書が2024年2月にユネスコに提出され、登録実現による経済波及効果は年間約85億円と見込まれています。
人口減少対策では2024年から2050年までの26年間で県内人口が約28.3%減少すると予測されており、これに対しUIJターン促進事業により2023年度は約1,250人の転入者増加を達成しています。また、豪雪地帯対策として除雪費用に年間約420億円が投入され、高齢化率35.8%の中山間地域における生活インフラ維持が重要課題となっています。
記事は、新潟県が日本海側の地理的優位性と豊富な農業・エネルギー資源を活かしつつ、人口減少と高齢化への対応が地域発展の鍵となると結論づけています。