日本政策投資銀行が発行する「中国ハンドブック2025年度版」は、中国地域（広島、岡山、山口、鳥取、島根の5県）の経済・産業・社会情勢を総合的に分析した地域経済報告書です。
中国地域の総人口は約724万人（2024年10月現在）で、全国総人口の5.8%を占めています。県内総生産（GRP）は約26.9兆円で全国の5.1%を占め、製造業が域内総生産の22.8%を占める産業構造となっています。特に広島県が地域全体のGRPの41.2%を担う中核的役割を果たしており、岡山県（23.1%）、山口県（16.8%）がこれに続いています。
製造業では自動車産業が中心的役割を担い、マツダの国内生産台数は年間約95万台（2023年度）で中国地域の製造業出荷額の18.2%を占めています。造船業では今治造船グループが国内シェア30.8%を維持し、鉄鋼業ではJFEスチール西日本製鉄所（福山地区）が年間粗鋼生産量約710万トンを記録しています。石油化学工業では山口県の周南コンビナートが国内エチレン生産能力の11.3%を占めています。
港湾機能では広島港の2023年取扱貨物量が約4,127万トン、水島港が約7,845万トン、徳山下松港が約3,892万トンを記録し、瀬戸内海の地理的優位性を活かした国際物流の拠点として機能しています。コンテナ取扱量では広島港が年間約44万TEU、水島港が約12万TEUとなっています。
観光分野では2023年の域内観光入込客数が約1億2,400万人を記録し、うち外国人観光客は約385万人（コロナ禍前の2019年比78.3%まで回復）となっています。世界遺産の厳島神社には年間約312万人、原爆ドームには約175万人が訪問し、瀬戸内海国立公園全体では約2,850万人の利用者数を記録しています。
人口減少への対応では2024年から2050年までの26年間で域内人口が約21.8%減少すると予測され、特に中山間地域では35%を超える減少が見込まれています。これに対し広域連携として「中国地方知事会スクラム構想」により、デジタル人材育成事業に5県合計で年間12億円を投入し、2025年度までに約3,500人の育成を目指しています。
記事は、中国地域が瀬戸内工業地帯の製造業基盤と港湾物流機能を核とした競争力を維持しつつ、人口減少と産業構造転換への対応が重要な課題であると結論づけています。