中国自動車業界における「内巻」と呼ばれる過当競争の問題と、その解消に向けた業界の取り組みについて分析したものです。
中国自動車工業協会（CAAM）は2025年5月31日、「公平な競争秩序の維持、産業の健全な発展を促進する提案」を発表しました。この提案は、企業に公平な競争の原則順守、コストを下回る価格での販売禁止、優位企業による優越的地位の乱用禁止などを求める4項目から構成されています。工業情報化部もこの提案に賛同し、不正・不当な競争に対して必要な監督措置をとるとしました。
「内巻」とは過度な内部競争により消耗戦に陥ることを指すネット流行語で、中国自動車業界では5月23日以降にBYDが22車種の大幅値下げを実施し、吉利汽車なども追随する新たな価格戦争が発生しました。CAAMは、この無秩序な価格競争が産業の利潤水準低下の重要な要因であり、企業利益の圧縮、製品品質やアフターサービスへの悪影響、消費者利益の損害、安全上の危険をもたらすと指摘しています。
国家統計局データによると、一定規模以上の自動車製造業企業の設備稼働率は、2023年第4四半期76.9％から2024年第1四半期64.9％へ大幅低下し、2025年第1四半期も71.9％と健全とされる75％を下回りました。利益率も2018年の7.3％から2024年には4.3％まで低下し、一定規模以上の工業企業全体の平均5.4％を下回っています。一方で企業数は2018年の1万5,263社から2023年には1万8,899社へ増加し、市場拡大による企業参入の活発化が確認されます。
6月6～7日の中国自動車重慶フォーラムでは、業界関係者が「内巻」の悪影響を指摘し、合併・統合による解決策を議論しました。中国国際貿易促進委員会の王俠会長は、合併や再編が「内巻」管理の重要手段であるとし、4つの再編パターンを提示しています。また、中国メーカーは海外市場でも過当競争を避け、品質と安全性を重視すべきと警告しました。
記事は、中国自動車業界の「内巻」問題が設備稼働率と利益率の低下を招いており、業界全体の健全な発展と国際競争力向上のため、価格競争から品質・技術競争への転換と業界再編が必要不可欠であると結論づけています。