2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)のテーマウイーク「平和と人権」の一環として開催された「労働市場における格差是正」セミナーは、グローバル社会における職場の多様性と包摂性の重要性を国際的な視点から議論する重要な機会となりました。国内外の有識者6人が登壇し、「あらゆる職場で倫理的・社会的に不当な不平等を解消し、異なる属性の人々が平等な機会を得て、健全な企業の成長を実現するための施策」について多角的に検討しました。
国連事務次長補の白波瀬佐和子氏がモデレーターを務め、ジェトロ・アジア経済研究所の山田美和上席主任研究員は国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」を紹介し、企業の人権尊重責任を規定する国際的フレームワークの意義を強調しました。日本ロレアルの楠田倫子氏は、民間企業の具体的取り組みとして、社会的・経済的に困難な立場にいる人々への雇用機会創出を購買活動を通じて行うインクルーシブソーシングプログラムの実例を紹介し、企業がサプライチェーン全体で社会的価値を創出する可能性を示しました。
オックスフォード大学のサビーナ・アルキレ氏は労働市場の格差がもたらす貧困解消をグローバルな挑戦と位置づけ、政府、NGO、民間企業の包括的なコミットメントの必要性を訴えました。マレーシア最大手メイバンク・グループのナリタ・ナジリー氏は、DEI&B(ダイバーシティー、エクイティー、インクルージョン&ビロンギング)の推進により人々の多様性が尊重・活用され、組織内外に前向きな影響を与える重要性を語りました。
国連ユース担当事務次長補のフェリペ・ボーリエ氏は、若年層を変革の担い手として位置づけ、ビジネスの未来が異なる世代間の交流と協力にかかっているとし、世代間の信頼醸成のための「対話の必要性」を強調しました。これらの議論は、日本が国際社会に向けて発信する労働市場改革と社会包摂のメッセージとして重要な意味を持ちます。
このセミナーは、大阪・関西万博が単なる技術展示の場ではなく、社会課題解決のための国際対話の場として機能していることを示しており、日本企業にとってもグローバルな人権・労働基準への対応強化や、多様性を活かした組織運営の重要性を再確認する機会となりました。企業の持続可能性とESG経営の観点からも、労働市場における格差是正は今後ますます重要な経営課題となります。