ジェトロが分析した米国の関税措置がASEAN諸国に与える影響について、日系企業の相互関税への反応を詳細に検証した第2回レポートです。
日系企業は、米中貿易摩擦と米国の関税政策の変化に対し、サプライチェーンの大規模な再編で対応しています。調査によると、中国に生産拠点を持つ日系製造業の約65％が、過去3年間でASEANへの生産移管または新規投資を実施しており、特にベトナム、タイ、マレーシアが主要な移転先となっています。
業種別では、電子部品・デバイス製造業が最も積極的に生産移管を進めており、次いで自動車部品、繊維・アパレル、家電製品の順となっています。これらの企業は、米国向け輸出における関税回避だけでなく、地政学的リスクの分散、労働コストの最適化、ASEANの成長市場へのアクセスなど、複合的な要因を考慮して投資判断を行っています。
具体的な事例として、ある大手電子部品メーカーは、中国の主力工場の生産能力の40％をベトナムとタイに移管し、米国向け製品の生産を完全にASEANにシフトしました。この結果、米国の追加関税を回避できただけでなく、ASEANの自由貿易協定（FTA）ネットワークを活用した第三国向け輸出も拡大しています。
一方で、日系企業は新たな課題にも直面しています。ASEANでの急速な生産拡大により、熟練技術者の不足、部材の現地調達率の低さ、物流インフラの制約などが顕在化しています。また、米国が原産地規則を厳格化する動きもあり、単純な最終工程の移転では不十分で、より深い現地化が求められています。
今後の戦略として、多くの日系企業は「チャイナ・プラス・ASEAN」アプローチを採用し、中国市場向けは中国で、その他市場向けはASEANで生産する二元体制の構築を進めています。また、ASEANの中でも複数国に分散投資することで、特定国への過度な依存を避ける動きも見られます。
記事は、米国の関税政策が日系企業のグローバル戦略に根本的な変化をもたらしており、この変化がASEANの産業発展に大きく貢献していることを示しています。