農林水産省農村振興局が令和7年3月に公表した、旅行会社が農泊の教育旅行商品を効果的に企画・販売するための実務手引き書です。
旅行会社にとって農泊教育旅行は、従来の観光地巡りとは異なる体験価値を提供できる新たな商品カテゴリーとして位置づけられています。本手引きでは、農泊地域の教育的価値を理解し、それを旅行商品として適切にパッケージ化し、学校や教育委員会に対して効果的に提案するための手法が体系的に整理されています。
商品企画の基本的な考え方として、学習指導要領との整合性を重視し、教育効果を明確に訴求することの重要性が示されています。具体的には、各教科(社会科、理科、総合的な学習の時間など)との関連性を明示し、事前学習から現地体験、事後学習まで一貫した教育プログラムとして構成することが求められています。
農泊地域との連携では、地域の受け入れ体制や提供可能な体験メニューを正確に把握し、学校のニーズと地域の資源をマッチングさせる調整役としての機能が重要とされています。また、安全管理体制の確認、緊急時対応手順の整備、保険・補償制度の説明など、学校側が重視する安全面への配慮についても詳細に解説されています。
販売戦略では、教育旅行市場の特性を理解し、学校の意思決定プロセス(校長、教頭、学年主任、教育委員会等)に応じた提案手法が紹介されています。価格設定においても、教育効果と費用対効果のバランスを適切に説明し、保護者の理解を得るための説明資料の作成方法が具体的に示されています。
品質管理では、農泊地域との継続的な連携により、指導者のスキル向上、施設・設備の改善、プログラム内容の充実を図ることの重要性が強調されています。また、参加した児童・生徒や引率教員からのフィードバックを活用した商品改善の手法についても詳細に説明されています。
マーケティング展開では、農泊教育旅行の特徴(自然体験、農業体験、地域交流、食育など)を活かした差別化戦略や、SNSや口コミを活用した情報発信手法が紹介されています。特に、参加した学校の事例や児童・生徒の感想を活用した実績訴求の重要性が示されています。
記事は、旅行会社が農泊教育旅行を適切に商品化・販売することにより、農山漁村の活性化と教育の質的向上を両立させる重要な役割を果たすことができることを示していると結論づけています。