日本銀行鹿児島支店が2025年7月1日に公表した鹿児島県金融経済概況について、県内経済の現状と各部門の動向を包括的に分析したものです。
主要なポイント
1. 景気の総合判断と改善の広がり
- 鹿児島県の景気は「緩やかに回復している」との基調判断を維持
- 個人消費と観光が回復の牽引役となり、公共投資も高水準で経済を下支え
- 一方で、生産活動は弱めの動き、住宅投資も減速傾向を示す
- 短観(6月、鹿児島・宮崎両県集計)では企業の設備投資意欲が増加基調
2. 個人消費の堅調な推移
- 百貨店・スーパー販売額は前年を上回る水準で推移、物価上昇下でも実質消費は底堅い
- 家電販売額も前年比プラスを維持、買い替え需要と新製品投入効果が寄与
- 乗用車新車登録台数(軽自動車含む)は前年を上回る、供給制約緩和と新型車効果
- 消費マインドは賃金上昇と雇用改善を背景に緩やかに改善
3. 観光関連の順調な回復
- 主要ホテル・旅館の宿泊客数は前年を上回って推移、インバウンド需要も回復傾向
- 主要観光施設入場者数も前年比プラスを継続、県内観光の魅力向上策が奏功
- 桜島・霧島などの自然観光資源と温泉地への集客が堅調
- 観光消費の波及効果が飲食・小売業など幅広い業種に恩恵
4. 生産活動と産業別動向
- 鉱工業生産指数(季節調整済)は食料品、汎用・生産用機械を中心に前月比上昇
- 食料品工業は焼酎・加工食品の需要堅調、地域特産品の全国展開も進展
- 電子部品・デバイス工業は在庫調整の影響で弱含み、半導体市況の影響を受ける
- 農林水産業は天候不順の影響を受けつつも、ブランド化戦略により付加価値向上
5. 雇用・所得環境の着実な改善
- 有効求人倍率(季節調整済)は上昇、人手不足感は全業種で継続
- 現金給与総額は前年を上回って推移、春闘での賃上げ効果が波及
- 常用労働者数も前年比増加、正規雇用の拡大傾向が続く
- 若年層の県外流出抑制と UIターン促進が地域の課題
6. 物価・金融動向
- 消費者物価指数(生鮮食品除く総合)は前年比プラスで推移、エネルギー・食料品価格が押し上げ
- 預金残高は前年を上回る、個人預金の積み上がりと法人預金の安定推移
- 貸出金も前年比増加、設備投資資金需要と住宅ローンが下支え
- 貸出約定平均金利は前月比上昇、日銀の金融政策正常化を反映
- 企業倒産件数は前年を上回るも低水準、資金繰り支援策の効果持続
記事は、鹿児島県経済が観光需要の回復と個人消費の持ち直しを背景に緩やかな回復基調を維持しているものの、生産活動の弱さや人手不足などの構造的課題への対応が持続的成長の鍵を握ると分析しています。