経済産業研究所(RIETI)が発表した「日本の自動化リスク指数(ARI)に関するデータベースの構築手法」に関するテクニカル・ペーパーです。AIとロボティクスによる職業の自動化リスクを評価する新たな指標の作成方法を詳細に説明しています。
主要なポイント
1. 研究の概要
- 執筆者:深尾京司(RIETI理事長)、池内健太(上席研究員)、長谷佳明(野村総合研究所)、Cristiano PERUGINI(ペルージャ大学)、Fabrizio POMPEI(ペルージャ大学)
- 発行日:2025年6月
- 研究プロジェクト:東アジア産業生産性
- 文書番号:25-T-001
2. 自動化リスク指数(ARI)の特徴
- 新規性:日本の職業に特化した初の包括的な自動化リスク評価指標
- 評価対象:AIおよびロボティクスによる職業の代替可能性
- 時系列評価:2024年、2030年、2040年の3時点での予測
- 先行研究の発展:Frey and Osborne(2017)、Paolillo et al.(2022)の研究を基盤
3. データベース構築の手法
- 基礎データ:
- 日本の職業情報提供サイト「job tag」の職業情報データベース
- 39のスキル、5つの能力、9つの職業属性を収録
- 専門家調査:
- 2024年にRIETIと野村総合研究所が共同実施
- 各スキル・能力・属性の技術的代替可能性を専門家が評価
- 統合方法:職業データと専門家評価を組み合わせて指数化
4. ARIの算出方法
- 基本原理:
- 各職業に必要なスキル・能力・属性のレベルを特定
- 専門家が予測する技術的に実現可能な代替水準を評価
- 両者の差異に基づいて自動化リスクを定量化
- 評価の精度:職業レベルでの詳細な分析が可能
5. 評価の3つの時点
- 2024年(現在):現時点での自動化リスクの評価
- 2030年(中期):技術進歩を考慮した中期的予測
- 2040年(長期):さらなる技術革新を想定した長期的展望
6. 研究の意義
- 政策立案への貢献:
- 雇用政策の策定に必要なエビデンスを提供
- 産業構造の変化を予測する基礎データ
- 労働市場分析:
- 職業別・産業別の自動化影響を可視化
- 労働市場研究の新たなデータ基盤
- 社会的インパクト:技術進歩が雇用に与える影響の定量的把握
7. データベースの活用可能性
- 研究用途:
- 労働経済学研究での活用
- 技術進歩と雇用の関係分析
- 政策用途:
- 職業訓練・再教育プログラムの設計
- 産業政策の立案
- 企業用途:
- 人材戦略の策定
- 投資判断の参考資料
8. 国際的な位置づけ
- 日本独自の貢献:日本の職業構造に特化した初の包括的データベース
- 国際比較の可能性:他国の同様の研究との比較分析が可能
- 方法論の発展:既存研究を発展させた新たなアプローチ
本研究は、AI時代における日本の労働市場の将来を考える上で極めて重要な基礎資料です。特に、職業別の自動化リスクを時系列で評価することで、政策立案者、研究者、企業が将来の労働市場の変化に備えるための貴重な情報を提供しています。 EOF < /dev/null