早稲田大学の宮川大介氏、東京商工リサーチの柳岡優希氏、三井住友ファイナンス&リースの矢澤広崇氏と雪本真治氏が、法人向けリース契約の営業活動において、インサイドセールスによる潜在顧客情報の提供が成約確率に与える影響を実証分析したものです。
主要なポイント
1. 研究の背景と目的
- 対象業務:法人向けリース契約における営業活動
- 問題意識:フィールドセールス(訪問営業)とインサイドセールス(電話営業)の役割分担の最適化
- 研究目的:テレマーケティング担当者が探索した潜在顧客情報の利用が成約確率向上に寄与するかを因果関係に着目して検証
- 分析手法:Kleinberg et al. (QJE 2018)で提案されたcontraction techniqueを採用
2. 使用データと分析対象
- データ提供元:国内リース業最大手のSMFL(三井住友ファイナンス&リース)
- データ内容:
- リース営業活動実績データ
- 潜在顧客リスト
- 営業活動の成否実績データ
- 分析の特徴:実際の企業データを用いた大規模な実証分析
- 因果推論:単純な相関関係ではなく、因果関係の特定に注力
3. 主要な分析結果
- 顧客クラス別の効果の違い:
- フィールドセールスが独力で接触する傾向が弱い顧客:インサイドセールスの情報提供が成約確率を有意に改善
- フィールドセールスが独力で接触する傾向が強い顧客:インサイドセールスの情報提供による改善効果なし
- 情報の価値の条件依存性:異なる方法による情報生産の価値が顧客特性に応じて変化することを確認
- 実証的エビデンス:営業リソースの最適配分に関する定量的な根拠を提供
4. 実務的インプリケーション
- 営業戦略への示唆:
- 顧客セグメントに応じた営業チャネルの使い分けが重要
- すべての顧客に画一的なアプローチは非効率
- データ活用の重要性:適切なデータの活用が企業パフォーマンスの改善に直結
- 営業効率の向上:限られた営業リソースをより効果的に配分する方法を提示
- インサイドセールスの役割:特定の顧客層に対する情報提供機能の重要性を実証
本研究は、営業活動におけるデータドリブンなアプローチの有効性を実証し、フィールドセールスとインサイドセールスの効果的な協働モデルを提示したものです。