決済動向（2025年5月）

1. 基本情報

• 発行機関: 日本銀行 決済機構局
• 公表日: 2025年6月30日
• 対象期間: 2025年5月
• データ範囲: 日銀決済システムおよび民間決済システムの主要指標

2. 日銀当座預金決済の動向

2025年5月の決済実績（1営業日平均）

• 決済件数: 94,623件（前年同月比+6.1%）
• 決済金額: 228.2兆円（前年同月比+0.6%）

前年比で件数は堅調な増加を示す一方、決済金額の伸びは小幅にとどまっており、1件当たりの決済金額は減少傾向。

3. 決済件数の推移分析

2025年に入ってからの推移では：

• 1月：94,169件（前年比+3.9%）
• 2月：95,089件（前年比+8.3%）
• 3月：99,237件（前年比+4.2%）
• 4月：94,276件（前年比+7.0%）
• 5月：94,623件（前年比+6.1%）

年初から一貫して前年を上回る水準を維持し、デジタル化の進展による決済頻度の増加が顕著。

4. 決済金額の推移分析

2025年の決済金額推移：

• 1月：245.0兆円（前年比-2.5%）
• 2月：235.4兆円（前年比-4.7%）
• 3月：244.7兆円（前年比-5.2%）
• 4月：242.9兆円（前年比+2.7%）
• 5月：228.2兆円（前年比+0.6%）

1-3月は前年割れが続いていたが、4月以降は前年比プラスに転じ、金融市場の回復傾向を示唆。

5. 決済システム全体の構造

本統計は以下の主要決済インフラを包括的に監視：

• 日銀ネット資金決済システム: 大口決済の中核インフラ
• 国債DVP決済: 国債取引の即時グロス決済
• 全銀システム: 銀行間の内国為替決済
• 電子マネー・デビットカード: 小口決済手段

6. 金融インフラの安定性評価

2025年5月の実績は以下の点で日本の決済インフラの健全性を確認：

• 決済件数の安定的増加による取引活発化
• 1営業日平均228兆円の巨額決済の円滑処理
• システムトラブルなしでの継続運営

7. 決済効率性の向上

前年比で件数増加率（+6.1%）が金額増加率（+0.6%）を大幅に上回ることで：

• 決済の小口化・頻度増加によるリアルタイム性向上
• 金融機関の流動性管理の高度化
• リスク分散効果の向上

8. 国際比較における位置づけ

1営業日228兆円の決済規模は：

• 日本のGDP比で年間約1.7倍相当の資金循環
• 主要国中央銀行決済システムとして世界最大級
• 金融ハブとしての東京市場の重要性を裏付け

9. 政策的含意

安定的な決済インフラ運営は：

• 金融政策伝達メカニズムの円滑化に貢献
• 金融システム全体の安定性確保
• デジタル円（CBDC）検討における基盤データ提供

10. 今後の注目点

決済動向の継続的モニタリングにより、金融デジタル化の進展、国際金融市場との連携強化、次世代決済インフラの構築に向けた政策判断の基礎データとして活用される。