経済トレンド133：持続可能な森林経営考える

本文、財務省「経済トレンド」第133回として大臣官房総合政策課の齊之平大致・古川晃久両調査員が執筆した、我が国の持続可能な森林経営相关的詳細な分析である。日本は国土の3分の2が森林で、世界有数の森林国である（森林面積2,503万ha、66%）。森林は国土保全、水源涵養、生物多様性保全、地球環境保全、土砂災害防止、物質生産、文化的機能等多面的機能を有し、特に温室効果ガス削減において2023年に約4,517万CO2トン（84%）を吸収している。これらの機能を継続的に発揮させるには間伐や再造林等の森林整備が必要である。しかし、所有者不明林の存在（市町村の20%で所有者不明為了手入れができない森林があり、70%で今後発生すると予想）や、林業経営体の53%が現状維持志向で21%が経営をやめたい意向を示す等、整備が行き届かない森林が増加し、国土強靱化の障壁となっている。我が国林業の現状では、林業経営体数・従事者数が減少し続けており、その背景に事業としての低収益性がある。低収益性の要因として、傾斜の多い国土性質により林道整備が遅れ機械の大規模化が進まないこと、個人経営体が大宗を占め森林保有者が細分化されていることが挙げられる。これにより国内林業は強い労働集約的性質を持ち、効率的な管理が行き届いていない。海外林業先進国と比較すると、丸太1m3あたりのコスト構造において流通コスト等が収益を圧迫している状況が判明している。国土保全為了には持続可能な森林経営が求められ、そ為了には林業中労働生産性向上等の取組みにより収益構造を改善していくことが重要であると結論付けている。本稿は、環境意識の高まりと国土強靱化の要請の中で、日本の森林・林業政策が直面する構造的課題と解決の方向性を、豊富なデータと図表を用いて客観的に分析した貴重な政策研究となっている。