巻頭：日本酒世界ブランド之一つなる日！ GALERIE K PARIS 代表取締役社長 宮川圭一郎

本文、パリで日本酒ギャラリーを経営する宮川圭一郎氏による巻頭言で、フランス中日本酒の躍進と世界ブランド化への展望を論じている。1990年にパリに来た当時は想像もできなかったが、現在では2025年版ミシュランガイド掲載の星付きフレンチレストラン654軒の約10％で日本酒が提供されるまでになった。フランスでの日本酒人気の背景には、いくつかの要因がある。第一に、日本酒の扱いやすさで、白ワインと異なり開栓後も2週間ほど安定して楽しめ、保存料の二酸化硫黄（SO₂）も使用されていないため、「ナチュラル」な飲み物として評価されている。第二に、フランス料理でも重要視される「UMAMI（旨味）」との相性の良さがある。米と麴の発酵から生まれる日本酒特有の旨味が、フランスのシェフやソムリエに認められ始めている。第三に、フランスの「香りの文化」と日本酒の吟醸香の親和性である。16世紀から続く香水文化を持つフランスで、日本酒の繊細で華やかな香りが評価されることは大きな意味を持つ。宮川氏は、フランスの約2,000人のソムリエとの連携が重要だと指摘する。パリ・ソムリエ組合は2017年開始の日本酒コンクール「クラマスター」を後援し、日本酒造組合中央会は2020年にフランス・ソムリエ協会とパートナー契約を結んでいる。「ワインに唯一代わり得る醸造酒があるとすれば、それは日本酒である」という世界標準をフランスで確立し、そこから世界へ広げていくことが目標だと宮川氏は述べる。まさに「天の時」が来た今、「地の利」を活かし、「人の和」によって日本酒の世界ブランド化を実現する時機が到来していることを、本記事は力強く訴えている。