中小企業庁が中小M&A市場の改革を図るために策定した「中小M&A市場改革プラン」の公表について解説したものです。
中小企業において経営者の高齢化に伴う後継者不在の問題が経営上の課題として強く認識される中、中小企業庁は事業承継・M&Aの推進を図ってきました。事業承継ニーズの高まりを受けて中小M&Aの件数は大きく増加したものの、特に地方部や比較的小規模の中小企業において、M&Aに対する不安感が残っていることから、中小企業全体におけるM&Aの浸透・実現に向けた不安の解消や理解の醸成を図る必要があります。
事業環境の変化として、人手不足の深刻化や賃上げ原資確保の必要性が高まる中で、M&Aを単に事業承継を実現するための選択肢としてではなく、中小企業が成長を実現するための戦略的な手段として推進していく重要性が一層高まっています。また、中小M&A市場の急速な拡大に伴いM&A支援機関が増加する中で、その支援の質が十分とは言えないという声や不適切な譲り受け側の存在も指摘されています。
これまで中小企業庁は「中小M&Aガイドライン」や「M&A支援機関登録制度」といった取組により支援機関の質・倫理観の向上やM&Aの実務ルールの浸透を図ってきましたが、更なる取組が求められています。こうした課題を踏まえ、2025年4月に「中小M&A市場の改革に向けた検討会」を設置し、各関係者が実施すべき取組とそれらを促進する施策について検討を行ってきました。
今回公表された「中小M&A市場改革プラン」では、中小M&Aの普及・促進を図るためのこれまでの取組を振り返るとともに、現時点の事業承継・M&Aに係る状況を紹介しています。その上で、中小M&A市場改革に向けた今後の施策の方向性として、（1）M&Aの譲り渡し側に係る施策、（2）中小M&A市場に係る施策、（3）M&Aの譲り受け側に係る施策をそれぞれ取りまとめています。関連資料として、概要版（720KB）と本文版（8,500KB）のPDFファイルが公開されています。
記事は、中小企業の持続的成長と事業承継問題の解決に向けて、M&A市場の健全な発展を促すための包括的な政策方針を示したものとして評価されています。